"「いなくても回る」と言われた私に、12件の着信" 第9話
フロアに残されたのは、凍りついた社員たちと、息を荒らげる社。 そして、勝ち誇ったように唇を歪めるあのだった。
社はに持った赤ペンのる伝票を、私のデスクのに放り投げた。
「佐藤さん。君がこの『品質管理チェックシート』に承認印を押しなさい。それで倉庫のシステムを制解除して、荷データを流せ」
デスクのに落ちてきた、枚の。 社内の品質保証責任者として、私が管理してきたチェックシート。 そこに私の判子が押されれば、この改ざんされた伝票は「営業事務が確認・承認した正規のもの」として社内記録に残る。
何かあった、すべての責任を背負わされるのは、判子を押した私だ。
「……お断りいたします」
静かに、しかしはっきりと告げた。
「何だと?」 社の目が、信じられないものを見るように見かれた。
「私は品表示の法令遵守に基づいて業務をっております。事実と異なる賞期限の伝票に、私の印鑑を押すことはできません」
「佐藤、お……自分が誰に向かってを利いているのか分かっているのか? 社命令だぞ」
「社命令であっても、違法為の隠蔽に加担することはできません」
オフィスのが、シーンと静まり返った。 誰もが呼吸を止め、私と社の睨みいを見つめている。
社の顔が、りでどす黒く染まっていく。
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「……いい度胸だな。も置いてやって、しばかり業務をっているからと増しおって。代わりなんていくらでもいるんだぞ」
「結構です」 私の声は、驚くほど平坦だった。 臓は鐘のように打っていたが、指先は議なほどえ切っていた。
「私の代わりがいるとおっしゃるなら、どうぞ副主任に承認印を押させてください。副主任のシステム導入によってじたエラーです。責任者が承認されるのが筋かとじます」
私の線が、社のろに隠れるあのを射抜いた。
あのはビクッと肩を震わせ、青ざめて首を横に振った。 「わ、私……? そんなの、私まだ品質管理の資格とか持ってないし……!」
「資格の無ではありません。責任を取る覚悟があるかないかです」
あのは何も言い返せず、社のスーツの裾をぎゅっと握りしめて俯いた。
結局、そののセンター向けの荷は、社自が個の職印を無理やり押し、営業部の承認をバイパスする形で荷された。 類の控えは、私の元にしっかりと残した。 付、、社が線を引いた指示のコピー。 すべてを、私の個用ファイルへと静かに保管した。
勝ったわけではない。 ただ、舟の底にいた穴が、さらにきく広がっただけだ。
そのの残業を終え、保育園と学童保育の延料を払い、自宅の玄関ドアをけたのは夜のを過ぎていた。
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「ただいま……」
返事はない。 夫の拓也は、今も夜運で潟へ向かっている。 暗いリビングのかりをつけると、散らかったおもちゃと、朝のまま片付いていない朝の器が目に入った。
胃のあたりが、い鉛をみ込んだように痛む。 痛薬をで流し込み、買ってきたコンビニのおにぎりを芽のに並べる。
「芽、ごめんね。遅くなっちゃって」
歳の娘は、リビングのカーペットので、膝を抱えて絵本を眺めていた。 普段なら「ママー!」と駆け寄ってくるはずなのに、今夜はやけに静かだった。
「お、もうがった? しんどくない?」 おでこにを当てようとすると、芽はさくを引いた。
その仕に、胸がチクリと痛んだ。
「芽……?」
「……ママ」 さな、消え入りそうな声だった。 に線を落としたまま、芽のさな指がパジャマの裾を固く握りしめている。
「どうしたの? 学で何かあった?」
芽はゆっくりと顔をげた。 そのきな瞳に、粒の涙がいっぱいに溜まっていた。
「ママ、私といるの、嫌なの?」
を、鈍器で殴られたような衝撃がった。
「……え?」 声が、震えた。
「な、何言ってるの芽。そんなわけないじゃない。ママは芽のことが番――」
「うそつき」 ポロリと、涙が娘の頬をこぼれ落ちた。
「曜、おて病院ったときも……ママ、ずっとスマホ見てた。私のなでてくれながら、ずっとポケットのでブーブー鳴ってるの気にしてた」