"「いなくても回る」と言われた私に、12件の着信" 第1話
複の排気から吹きす、ぬるい。 トナーの焦げたようなっぽい臭いが、の奥にまとわりついてれない。
「佐藤さん、悪いけどそっちの席に移ってくれる?」
半、社のその言で、私の定位置はフロアの等からこの「複の真横」になった。 がコピーを取るたびに背にが当たり、詰まりの警告音が鳴るたびにが痛くなる、番端の席。
私の席だった所には今、歳の女性が座っている。 社の息子と結婚して、いきなり「営業部副主任」の肩きをぶらげてやってきた奈緒さん。
埼玉県内にある、社員ほどのさな品加会社。 スーパーの惣菜コーナーに並ぶ調ダレやチルドパウチの卸をがけるこの会社で、私は、営業事務をやってきた。
毎朝半に社して、夜に入った注文のFAXを仕分け、基幹システムに打ち込み、川越や熊にある配送センターへの納品スケジュールを組む。 賞期限の管理、温度帯の確認、欠品の代替品配。 つでもミスをすれば、スーパーのから商品が消え、数百万単位の違約が発する世界。
料は取りで万そこそこ。 昇なんてここ数、雀の涙程度しかなかった。 それでも、現のパートさんや倉庫のドライバーたちに「佐藤さんがいてくれるから助かるよ」
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と言われるのが誇らしかった。
その全部を、社は「内だから」という理由だけであのに譲り渡した。
「副主任、この伝票の荷、空けないとチルド便がにいませんが」 「あ、いいのいいの。先方の担当者と話して、急ぎだから倒しにしてって頼まれたから」 「ですが、側の却ラインが――」 「佐藤さんって、本当に融通が利かないのね。例踏襲ばっかり。だから事務員止まりなんですよ」
品業界の現をもらないが、パソコンの画面で数字をいじる。 案の定、夕方になって倉庫から鳴ががる。 「由さん、聞いてないよ! まだが取れてないタレをどうやってトラックに積めばいいんだ!」
をげて回るのは、いつも私だった。 「申し訳ありません、島さん。私がなんとか調しますから」 倉庫責任者の島さんに平謝りし、配送業者に無理を言って便を組み直し、や汗を拭いながら残業する。
その横で、定の半になると、あのはハイブランドのバッグを肩にかけてちがる。 「お疲れさまでしたー。お義父様、今のお夕飯どうなさいます?」
社からてくる社の目尻は、デレデレにがっていた。 「おお、奈緒さん。美いものでもべにこうか」
私の机の横を、の甘いりが通り過ぎていく。 の私の積みねは、このたちの「内の戯れ」
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の盾に過ぎなかったのか。 指先がたく張り、マウスを握るに爪がい込む。 それでも私は、娘の保育料と宅ローンのために、喉の奥までかかった言葉をみ込み続けた。
異変が起きたのは、先週の曜の午だった。
ポケットのでスマートフォンが細かく震えた。 学の学童保育からの着信。 画面を見た瞬、臓がねがった。
「佐藤芽ちゃんのお母様ですか? 芽ちゃん、急におが度分までがってしまいまして……」
の奥で、カッと血が引く音がした。 歳の芽は、普段あまりをさない子だ。 それだけに、急激なは胸をざわつかせる。
夫の拓也は距トラックの運にていて、の曜まで埼玉には戻らない。 私しかいない。
「すぐにお迎えにきます」
話を切り、震える指で受話器を置いた。 そこからのは、息をつく暇もなかった。 来週曜に荷予定の案件リストをすべて印刷し、特記すべき納品条件を赤ペンでき込む。 曜は朝番で芽を児科に連れてかなければならない。 休暇を申請し、曜の業務を完全に引き継げるよう、点を枚の引き継ぎメモに落とし込んだ。
サーバー内の共フォルダにエクセルを保し、営業部全員宛てにパスを記載したメールを送信する。
準備を終え、私は印刷したを持って副主任のデスクへ向かった。