"作業着の夫を笑った同級生と、80万円の偽鑑定書" 第5話
けれど、私の話を全く聞こうともせず笑っているたちを見た。
これ以、このたちに自分の夫の話をする気にはなれなかった。
代は笑いを収めると、私の方へ同するような線を向けてきた。
「恵も苦労しているのね」
私は代の目を見つめ返し、静かに、そしてはっきりと答えた。
「苦労だとったことはないわ」
代は私の言葉を信じないように、軽くを振った。
「がらなくていいのよ」
美恵子は周囲のテーブルへも聞こえるように、し声を張った。
「老まで働かないと暮らせないなんて、貧乏な旦さんでかわいそう」
美恵子は私の顔を覗き込み、しれむような目をした。
「恵もでしょう」
代は笑いながら、美恵子の肩を軽く叩いた。
「美恵子、それは言いすぎよ」
代はそう言いながらも、全く悪びれる様子もなく楽しそうに笑っていた。
代は再び私へ線を向け、し刻そうな声をした。
「でも、ご主が体を壊したら収入もなくなるんじゃない?」
美恵子は代の言葉に頷き、自分の正当性を主張するように胸を張った。
「配していってあげてるのよ」
美恵子はふみ子の方へ線を向け、同を求めた。
「もちろんよ。友達だから放っておけないの」
私は美恵子と代の顔を順番に見つめ、静かに言葉を返した。
「配してくれてありがとう。
広告
でも私たちは今の暮らしに満しているわ」
美恵子はし呆れたような表を作り、首を横に振った。
「あら、恵は欲がないのね」
私はテーブルのの自分のグラスを見つめ、静かに答えた。
「必なものはりているもの」
美恵子はし声を尖らせ、私を諭すような態度を取った。
「今はそうでも、この先は分からないでしょう」
美恵子は指を折って数えるように、素を並べてた。
「病気になったり、の修理が必になったり、何かとおがかかるのよ」
代は美恵子の言葉にく頷き、真剣な表を作った。
「それは本当にそうね」
美恵子は代の反応を見て、さらに自信をめたように見えた。
「でしょ。だから今あるおをしでも増やす方法を考えた方がいいの」
代はを乗りし、美恵子の顔をい入るように見つめた。
「美恵子は、何かいい方法をっているの?」
美恵子は待っていたとばかりに、元にい笑みを浮かべた。
「ええ、実は今みんなに見てもらいたいものがあるの」
美恵子は自分の子の脇に置いていた、きな紺の提げ袋へを伸ばした。
美恵子はその袋を両で持ちげ、私たちの目ののテーブルのへ置いた。
代は袋のが気になり、し首を伸ばした。
「何が入っているの?」
美恵子は袋のにを入れ、慎に何かを取りした。
広告
袋のからてきたのは、派な黒い箱だった。
美恵子は得げな表で、その箱の蓋をゆっくりとけた。
箱のには、蓋のついたきな丸い器が切に納められていた。
い朱の漆が、ホテルのるい照を受けて艶やかにっていた。
漆器の蓋には、繊細なの模様が美しく描かれていた。
代とふみ子は子からを乗りし、箱のを覗き込んだ。
代は嘆の声を漏らし、漆器から目をさなかった。
「綺麗な器ね。随分古そう」
美恵子は漆器の蓋に軽くを添え、誇らしげに語り始めた。
「旧に伝わってきた漆器よ。専の販売業者から特別に回してもらったの」
代はし配そうな顔になり、美恵子を見つめた。
「いんでしょ?」
美恵子はを置かず、自信に満ちた声ではっきりと答えた。
「今なら1つ80万円」
代とふみ子は互いに顔を見わせ、言葉を失った。
美恵子はさらにを乗りし、声をし落として続けた。
「でも数には何倍もの値段になるわ」
ふみ子は目を見き、わず美恵子に聞き返した。
「80万円?」
美恵子はふみ子の顔を見つめ、説得するように頷いた。
「に置いておいてもほとんど増えないでしょう。価値のあるものに変えておけば、楽しみながら財産を残せるのよ」
代は美恵子の言葉に納得したように、何度もく頷いた。
方で、私は美恵子の「何倍にもなる」という言葉がとても気になった。
私は美恵子の目を見つめ、静かに質問を投げかけた。