"偽装結婚と消えた二十四の図面" 第15話
私は、このおに会社を任せたい」
最初は、川さんのさな拍だけだった。 だが、それは隣の株主へ、さらにその隣へと伝播し、やがて会全体を揺るがすような割れんばかりの拍の嵐へと変わっていった。
壇で、冴子は元を両で覆い、肩を震わせていた。 、暗の底でたったで背負い続けてきた圧が、ようやく解き放たれた瞬だった。
拍が鳴り止まぬ、央に座っていた篠原竜蔵社が、い取りでゆっくりとちがった。 社はマイクのにみると、壇から川さんに向かって、々とをげた。
「……井の報告を、信じたふりをしておりました。、娘が泣いて事の止を求めた、莫な損失を恐れて目を瞑ったのは、ならぬ私です。……すべては、経営者失格である私の罪です。申し訳ありませんでした」
実の父親が公のでをげる姿を、冴子は涙を浮かべながら見つめていた。
採決の結果は、圧倒数での決だった。 井専務の解任、竜蔵社の辞任、そして桜台全棟の無償耐震補事の実施。 すべてが決まった、冴子は最にもう度マイクのにった。
「……桜台のすべての民の皆様には、私が直接軒ずつ向き、説と謝罪をさせていただきます。そして、すべてのの補事を見届けた……抜き図面に署名した監理者としての責任を取り、私もこの会社をります」
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会をた廊で、警備員に取り押さえられた井が、鬼の形相で俺の作業着の袖を掴んだ。 「お……私のをあてにしていただろう! 契約を守ると言ったはずだ!」 俺はそのをたく振り払った。 「俺が守るのは、あのとの契約だけです」
井はその、業務横領および建築基準法違反の教唆の容疑で、警察へと連されていった。 廊の先で待っていた竜蔵社は、俺の顔を複雑な面持ちで見つめた、ぽつりと言った。 「……蔵の親父が言っていた通りの男だったな」 そして、冴子に向き直り、震える声で告げた。 「すまなかった、冴子」 冴子は静かに礼し、父親の横を通り過ぎた。
ホテルのにると、の夕暮れの空が、息を呑むような鮮やかな茜に染まっていた。 冴子が歩のでち止まり、俺の肩にそっと額を預けてきた。柔らかな髪の温もりが伝わってくる。
「……ありがとう、介さん」
「まだ終わってませんよ。直さなきゃいけないが、あと軒残ってます」
冴子は涙の残る顔で、くすりと笑った。
「……本当に、真っ直ぐなね」
、赤務の作業の階に、しいさな製板が掲げられた。 『妹尾建築設計事務所』 所員は俺。その板のすぐ隣に、親父の遺した『妹尾務』の板が、綺麗に磨き直されて並んで掛けられた。赤親方がつの板を見げ、グズッとを鳴らした。
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桜台の本格な改修事が始まった。 俺が引いた補図面をに、赤さん率いる職たちが壁をけ、しい筋交いと物を組み込んでいく。会社の正規の予算がりたため、最品質の材と分なが揃っていた。 軒、また軒と、壁のにあるべき命の骨格が戻っていく。
冴子は約束通り、軒のを軒ずつ歩いて回った。 鳴り散らされたもあった。バケツのを掛けられ、玄関をけてもらえないもあった。だが冴子は、を拭いながら何度でもをげに通った。決して任せにせず、誠を尽くし続けた。 あるでは、リビングの正座のまま分罵倒され続けた。冴子は背筋を伸ばしたまま、度も言い訳をにしなかった。俺は黙ってその隣に正座し、共にをげた。で背負うと決めたからだ。 帰り、疲れ果てた冴子は、俺の作業着の袖をぎゅっと握りしめて歩いた。
の終わり、川邸の補事が完した。 リビングのに、ご主があのガラスのビー玉を置いた。 ビー玉はピタリと静止し、ミリたりとも転がらなかった。 「よし! このは、百点満点だ!」 ご主が破顔笑し、奥さんが女のようにを叩いた。冴子はその景を見て、声をげて笑った。の底からの、点の曇りもない笑顔だった。