"偽装結婚と消えた二十四の図面" 第14話
壇の正面には、篠原竜蔵社と井専務が並んで座っている。 最列の席に、背筋を伸ばした川さんの姿が見えた。目がうと、老紳士はさく頷いてみせた。
壇にがった冴子は、マイクのにち、凛とした声で第声を放った。
「本、株主である私から、つの議案を提いたします。第に、耐震偽装を主導した井専務、およびそれを黙認した篠原竜蔵社の取締役解任。第に、桜台分譲全棟における無償の耐震補事の実施。第に、第者委員会による徹底な原因究です」
会がきなどよめきに包まれた。 その揺を遮るように、井が嘲笑を浮かべてちがり、マイクを奪った。
「株主の皆様! その提案を聞くに、皆様にお見せしたいかぬ証拠がございます!」
背の巨スクリーンに、写真が次々と投された。 築の古びたアパート、そしての送記録。
「篠原冴子氏は、き蔵会の遺言にある『結婚』という条件を満たすため、に困った元社員の男をで買い、偽装結婚を仕組んだのです! このような誠実極まりないに、が社の経営を委ねることなどできるでしょうか!」
会から号と囁き声が渦を巻いた。 井は勝ち誇った笑みを浮かべ、壇のにいる俺を指差した。
「その契約結婚の当事者である夫、妹尾介君がここに来ています。
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妹尾君、へて、真実を話しなさい!」
百対の線が斉に俺へと突き刺さった。 俺は席をち、壇のマイクへと歩をめた。冴子とすれ違う瞬、彼女は微かに震えるで俺のスーツの袖に触れようとして、いとどまった。丈夫だ、と目で伝えた。
俺はマイクのにち、息を吸い込んだ。
「……はい。私と篠原冴子さんの結婚は、千百万円という銭契約から始まりました。それは紛れもない事実です」
会が蜂の巣をつついたような騒ぎになった。竜蔵社がたくを鳴らし、井がく頷いた。 だが、俺はそこで言葉を切らず、マイクを握り直した。
「ですが、今こので皆様にお話しすべきは、私たちの私活のことではありません。この会社がに桜台に建てた、の族の命のことです」
井の笑みが凍りついた。
「、桜台の宅を設計したのは私でした。これが、そのの本物の構造図面です」
俺の図で、弁護士がスクリーンの映像を切り替えた。 俺が引いた本来の図面と、筋交いが引かれた偽装図面が並んで映しされる。続いて、川邸の剥がされた壁の、空洞になった筋交いの位置、半分しかない物の拡写真。
「鱈目だ! そんなものは捏造だ!」 井がマイク越しに絶叫した。 「その男はで買われた男だぞ! 信用できるか!」
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「では、おの話をしましょうか」
俺は私の胸ポケットからスマートフォンを取りし、壇のマイクにスピーカーを押し当てた。 再ボタンを押す。
『――当たりじゃないか。浮いた資材費の数千万円は、裏のダミー会社を経由して私の座に入る仕掛けにしてあったんだ。配いらんよ、責任はすべて図面に名をいたあの娘が取る――』
井の肉声が、会の音響スピーカーを通じて宴会の隅々にまで轟き渡った。 を打ったような静寂が訪れた。 井の顔から、完全に血の気が失せていた。隣に座っていた取締役たちが、汚物を見るような目で斉に井からを引いた。
「そ、それは……酒の席の冗談だ! 成音声だ!」 見苦しく喚き散らす井の声は、もはや誰のにも届かなかった。
その、最列から静かにが挙がった。
「株主の川と申します」
元教師の澄んだ声が響いた。ちがった老は、壇の俺と冴子を温かく見つめた。
「私は、桜台の番目のにんでおります。……私たちは、何もらずにあの欠陥宅で暮らしていました。ですが、その、自分の資産をすべて投げ打ち、週末のたびに埃まみれになって私たちの命を守ろうとしてくれたがいました。そして、逃げることなく真実を告げ、をげてくれたのも、このおだけでした。
……私はを育てる仕事をしてきました。嘘をつくと、誠実なの目の違いは分かります。