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"偽装結婚と消えた二十四の図面" 第13話

「……おかえりなさい、介さん」

その夜、俺はダイニングテーブルのに、真しいきな方を広げた。残された軒のを、完璧に補するための詳細図面だ。 親父の具箱から角スケールを取りし、あの傷だらけのシャープペンシルを握り直した。 カチリ、と芯をす。、材と鋸しか握ってこなかった指先が、のでわずかに震えた。

冴子が湯気のつマグカップをそっと俺の脇に置いた。そして、俺の肩越しに図面を覗き込んだ。

「その線、ぶりね」

「……し、震えてますけどね」

「いいえ」 冴子は優しく微笑んだ。 「より、ずっと力くて、真っ直ぐよ」

それから株主総会までの毎晩、俺たちはつの机に向かい続けた。 俺が構造計算をやり直して補の線を引き、冴子が赤いペンで本本の寸法を検図していく。と同じ景だった。 ただつ違っていたのは、冴子が折、完璧な計算が成された図面の端に、さな赤ペンで『丸』をき添えるようになったことだった。

「篠原部、昔はそんな丸なんて度もくれませんでしたよね」

「ここは会社じゃないもの。それに……本当にいい図面なんですもの」

の終わり、軒分の補修図面がすべて完成した。 の空がみ始める、冴子はテーブルに突っ伏して静かな寝息をてていた。

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俺はその背に毛布を掛けた。初めてこの部に来たと同じ寝顔だったが、俺の胸を満たすは、もはや敬だけではなかった。

俺はもうつ、押入れの奥から段ボールを取りした。 底に眠っていたのは、に俺がきげた国交省への内部告発類だった。あの、では恐怖に負けてせなかった告発状。 今度は、冴子が集め続けた証拠類と、俺たちが引いた補図面を添えて、堂々と提する。

翌週末、俺と冴子は川さんのを訪ねた。 に通された冴子は、座布団をし、畳のに両をついて々と額を擦り付けた。

「このの図面に名を連ねている、篠原冴子と申します。……このの壁のには、入っているべき筋交いが本も入っていません。命を危険に晒してしまい、本当に、申し訳ありませんでした」

川さん夫婦は驚愕して顔を見わせた。 い沈黙の、元教師のご主は居まいを正し、静かにをいた。

「私は、子どもたちに『違えたら、正直に謝りなさい』と教えてきました。……ですが、になってから、保を捨てて自ら過ちを詫びに来られるは、そうくありません。……篠原さん、私たちはあなたを信じます」

ご主は照れくさそうに笑いながら、棚から通のハガキを取りした。

「実はね、このを買った記に、篠原ホームの株を百株だけ買ったんですよ。

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の臨株主総会の通が届いていましてね」

奥さんがご主の肩をポンと叩いた。

「この、元教師のくせにお節介で、黙っていられない性分なんですのよ」

初旬、俺は再び井専務から呼びされ、同じ料亭の個にいた。

「引き受けます。総会の壇で、偽装結婚だったと証言しましょう」

井は満そうに目を細め、価な酒を注いできた。 テーブルの、俺のズボンのポケットので、スマートフォンの録音アプリが静かに稼働していた。

「ただ専務、最につだけ教えてください。俺も無駄な罪を被りたくない。……桜台の筋交いを抜けと現に指示したのは、専務、あなたですね?」

井はグラスを干し、卑た笑みを漏らした。

「当たりじゃないか。浮いた資材費の数千万円は、裏のダミー会社を経由して私の座に入る仕掛けにしてあったんだ。配いらんよ、責任はすべて図面に名をいたあの娘が取る。あいつが刑務所にけば、すべてはのだ」

料亭をた夜で、俺はその録音音声を再した。 井の濁った声が、夜の空気に鮮に響き渡った。俺はそのファイルをクラウドのバックアップに保し、静かに息を吐いた。

そして、運命の。 臨株主総会の朝が訪れた。

会は駅ホテルの宴会だった。百を超える株主が席を埋め尽くし、異様な気とざわめきが充満していた。

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