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"偽装結婚と消えた二十四の図面" 第11話

だが、図面の設計者名のことだけは、俺にも分からねえ。……先のところへけ」

俺は作業着のまま、作業をびした。 息を切らして駆け込んだ法律事務所で、弁護士は俺の顔を見るなり、すべてを察したように静かに頷いた。そして、庫の奥から茶封筒を取りした。

「蔵さんがくなる直、私に預けられたものです。冴子さんがいつか、誰にも真実を打ちけられずに潰れてしまいそうになったのために、とね」

封筒のから滑りてきたのは、枚の図面だった。 枚は、に俺が魂を込めて引いた、桜台の本物の設計図。 もう枚は、筋交いが引かれた、確認申請用の偽装図面。

「、井専務はこの抜きの図面を、役所に提する段取りをえていました」 弁護士は、図面のを指先でトントンと叩いた。 「設計者の欄に、『妹尾介』と印刷してね」

血の気が引くどころではなかった。臓が凍りついた。

「井は最初から、あなたを代わりに仕てるつもりだったのです。将来、耐震偽装が発覚した、すべての刑事責任と損害賠償を、若造のあなたに押し付けて切り捨てるために。……冴子さんがその恐ろしい企みに気づいたのは、図面が役所に提されるの夜でした」

翌朝には申請がされてしまう。公な続き、図面から俺の名をす方法は、法にたったつしかしなかった。

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「あなたを、篠原ホームの社員でなくすること。解雇されたは、会社の代理として確認申請の設計者になることはできません。……冴子さんは翌朝番、あなたを即刻解雇しました。そして、震えるで、設計者の欄に自分の名をき込み、自分の印鑑を押したのです。万が、この正が世にて誰かが罪を背負わなければならない、その刃を受けるのはあなたではなく、自分自であるようにと」

目のが滲んで、何も見えなくなった。 あの、たい目を装いながら、背に回した冴子の両が微かに震えていた理由が、越しに胸に突き刺さった。

「あなたが段ボールを抱えてのをてった、冴子さんは階の湯の窓辺にち、あなたが見えなくなるまでずっと見送っていたそうです」

弁護士は、鏡をして目元を拭った。

「冴子さんはそので社に殴り込み、事を直ちに止するよう実の父親に泣いて懇願しました。ですが、竜蔵社は莫な違約を恐れ、井の虚偽の報告を信じて取りわなかった。結果、冴子さんは設計部の職を解かれ、窓際の持ち無汰な部署へと遷されたのです。それでも彼女が会社を辞めなかったのは、社内に残らなければ、桜台の図面や補修のがかりにアクセスできなくなるからでした」

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弁護士は、もう枚の類を差しした。 それは、井専務が現監督宛てにした、事費削減の極秘指示だった。『耐震壁および接物を半減すること』という文言のに、井の鮮な認印が押されていた。

「冴子さんが、命懸けで守り抜いてきた決定な証拠です」

「……どうして、俺に何も言ってくれなかったんですか」

絞りすような俺の問いに、老弁護士は優しく微笑んだ。

「言えば、あなたは違いなく戦ったでしょう。ですがのあなたには、企業と戦うための武器も証拠も、何つとしてなかった。握り潰され、業界から永久に追放されていたはずです。冴子さんは、あなたの建築士としての未来だけは、何があっても守りたかったのですよ。……蔵さんはくなる、すべてをり、遺言をき直しました。『冴子は器用で、すべてをで抱え込んでしまう。あの子が誰か、痛みを分かちえる本当の伴侶を見つけたに、株を譲り渡してやってくれ』とね。そして蔵さんは、こうも仰っていました。『冴子が選ぶのは、きっとあの真っ直ぐな線を描く男だろう』と」

のの、契約を交わした、弁護士が俺を見て嬉しそうに目を細めた理由が、ようやく痛いほど理解できた。

俺はもう、秒たりとも座っていられなかった。

法律事務所をびし、全力でアパートへとった。

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