みかん小説
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"偽装結婚と消えた二十四の図面" 第9話

赤信号でトラックが止まった、赤さんがハンドルを握りしめたまま、を見据えて言った。

「介。今のことは、帰ってあのと腹を割って話せ」

アパートに戻ったが、冴子はまだ帰っていなかった。 俺は部の気もつけず、暗のダイニングテーブルに座り続けた。テーブルの央に、コピーした図面を広げて。 が過ぎ、が過ぎ、付が変わった午。 鍵がガチャリと回り、ドアがいた。

音を引きずりながら入ってきた冴子は、で汚れた作業着を着ていた。また、どこかのに潜っていたのだ。 彼女がキッチンの蛍灯をパチリと点けた瞬、テーブルのの図面がのに晒された。 冴子のきが、氷のように静止した。 肩から提げていたバッグがに滑り落ち、から属製の定規と懐灯が甲い音をてて転がった。

「……桜台の設計者は、あなただったんですね」

冴子は何も答えなかった。顎を微かに引き、唇をく結んでいる。

「今、川さんのの壁を剥がしました。筋交いが本も入っていなかった。物も半分抜かれていた。……俺の図面には、完璧に入っていたはずの構造が、全部消されていた」

冴子の顔から、血の気がサッと引いていった。 息の詰まるような沈黙の、彼女は喉の奥から絞りすように言った。

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「……そうよ。それが、役所に提された桜台の確定図面よ」

言い訳のつもなかった。そのき直ったような態度が、俺の理性を完全に吹きばした。

「俺を追いし、俺の図面から全を削ぎ落として、自分の名で売りしたのか! そのために俺をクビにしたのか!? 正義を振りかざしていたあんたが、井と同じ穴の狢だったのかよ!」

冴子は蒼な顔のまま、唇をく噛み締めていた。血が滲むほどに。

「答えろよ、篠原部!」

「……契約で、決めたはずよ」

冴子の声が、微かに震えていた。

「『互いの過については、切詮索しない』って」

「逃げるな!」

俺はテーブルを拳で叩いた。

「川さん夫婦はな、このを作ってくれたにいつかお礼を言いたいって、から笑ってたんだぞ! きな震が来たら、あのたちはあのの敷きになってぬかもしれないんだ! ……図面の線は、むの命を預かる線だ。本でもを抜いたら、誰かを殺すことになる。……あんたがの俺に教えた言葉だろ! 今のあんたに、設計士を名乗る資格なんてこれっぽっちもない!」

冴子はゆっくりと目を閉じた。 そして、今にも消え入りそうな、静かな声で言った。

「……そうね。あなたの言う通りだわ。私には、資格なんてない」

冴子は泣かなかった。ただ、の目尻から粒だけこぼれ落ちた透な雫が、顎を伝ってに落ちた。

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俺はその涙から目を背け、自分の部から着替えを鞄に詰め込むと、乱暴にドアをけて部をた。 玄関のには、俺が端材で作ったさな踏み台が、ポツンと置かれていた。俺はそれを股で跨ぎ越してにた。 鉄のドアがい音をてて閉まる。夜のたい空気が、照ったを容赦なくやしていった。

その夜は、赤務の作業の階に泊まり込んだ。 赤さんは何も尋ねず、使い古した煎餅布団を敷いてくれた。暗ので梁を見げても、もできなかった。瞼を閉じると、冴子のこぼしたあの粒の涙が浮かんできた。 裏切られたのは俺の方だ。る権利があるのは俺の方だ。それなのに、なぜこれほどまでに胸が締め付けられるように痛むのか。

俺は起きがり、作業台の蛍灯ので方ノートをいた。 桜台の棟の図面。その余に、さな赤いペンの文字が残されていた。 、この図面を提した夜、冴子がき残してくれた言葉だった。

『このは、きっとくを守るわ。いい設計ね』

徒を褒める教師のような、温かい文字だった。 これほどのいを持って図面を見てくれたが、本当に自らの志で抜き事にを染めるだろうか? 初めて、氷のような疑の底に、別の能性が芽え始めた。

夜がけた頃、俺のスマートフォンが震えた。

井からだった。

『妹尾君、そろそろ本当のことがりたくなったんじゃないかね? 今夜、席を設けた。

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