みかん小説
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"偽装結婚と消えた二十四の図面" 第6話

そのそうなリュックサックの脇からは、属製の折りたたみ定規と力な懐灯の先端が覗いていた。 どこへき、何をしているのか、俺は度も尋ねなかった。互いのに干渉しない、それが契約だったからだ。

の暮れ、アパートの郵便受けに通の封が届いた。 親父の務が抱えていた負債のうち、半額にあたる百万円の完済証だった。振込名義は、約束通り『妹尾務』となっていた。 毎届いていた督促状が、そのを境にピタリと半分に減った。

俺は冴子の部の片隅に置かせてもらっていた、親父の遺のに座り、静かにをわせた。 親父、板のが半分落ちたぞ。 背で玄関ドアがく音がした。冴子が仕事から戻ってきたのだ。彼女はコートを脱ぐと、音もなく俺の隣に歩み寄り、畳のに正座して同じようにをわせた。

冴子はく、く目を閉じていた。会ったこともない俺の親父に、体何を語りかけているのか。 目をけた冴子は、遺のの親父に向かって、々とをげた。

「……とても、いいお顔のさんね」

それだけを呟くと、冴子はちがり、台所へとお茶を淹れに向かった。

晦の夜、冴子は珍しく午に帰宅した。 スーパーで買ってきた老のぷらを乗せ、で越し蕎麦をべた。

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さなテレビからは、名もらない若いたちの華やかな声が流れていた。 冴子は蕎麦を半分ほどべたところで、パイプ子に座ったまま、コクリと舟を漕ぎ始めた。の、このがたりとも休んでいないことを俺はっていた。

俺はちがり、毛布をその細い肩にふわりと掛けた。 その、テーブルのに投げされた冴子のが界に入った。 指の腹には、無骨なペンダコとはらかに違う、い豆ができていた。爪のには取り切れない屑が挟まり、指先には治りかけの々しい擦り傷がいくつもっていた。

のだ、と直した。 材を担ぎ、現の埃にまみれ、槌やバールを握りしめ続けたのだった。宅メーカーの社令嬢のなどでは、断じてなかった。

元の朝、俺たちは所のさな神社へと初詣にかけた。 段を登り、賽銭箱に銭を放り込む。冴子は鈴の緒を鳴らした、胸のでをわせ、じっとかなくなった。俺が礼拍礼を終えて目をけても、彼女はまだ祈り続けていた。の澄んだ陽が、彼女のい頬を照らしている。

「何をそんなにくお願いしてたんですか?」

参の階段をりながら尋ねると、冴子は悪戯が見つかった子どものように、かすかに微笑んだ。

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「……仕事のことよ」

旬、弁護士から事務所に呼びされた。 蔵さんの遺言に基づき、すべての株式の移転続きが完したという報告だった。これによって、篠原冴子は篠原ホームの株主に躍りたのだ。 弁護士は権利証の束を冴子に渡しながら、厳かな声で告げた。

「冴子さん、いよいよ詰めですね」

「ええ。始めましょう」

その翌週、俺と冴子は篠原ホームの本社ビル最階、社へと呼びされた。 な革張りのソファの向こう側に、冴子の実父である篠原竜蔵社が憮然とした表で座っていた。そしてその隣には、腕を組んで笑を浮かべる専務の井がっていた。、俺に耐震偽装をした男だ。井は俺の顔を見ても、眉ひとつかさなかった。

「にクビにした無能な設計士を夫にしたそうだな」

竜蔵社は皿に葉巻を押し付け、値踏みするように俺をのてっぺんから爪先まで見ろした。

「篠原のの娘が、で男を買い漁るとは世も末だ。それとも貴様、娘の財産目当てで取り入ったのか? 成りがりの崩れが」

俺は両拳をく握りしめた。奥歯が軋むほどのりが込みげ、言い返す言葉が喉元までかかった。 だが、俺がをくよりもく、冴子が歩にみた。

「このを、侮辱しないで!」

内に、張り詰めた絹を裂くような鋭い声が響き渡った。 社も井も、目を見張って息を呑んだ。

「妹尾介は、お父さんの会社にいるどんな設計士よりも、真っ直ぐで誠実な線を引く本物の技術者よ。

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