"5年ぶりに帰宅した夫と、もう父親を必要としない家族" 第14話
「待て! 運べ! は払ってあるんだぞ!」
夫が狂ったように叫ぶのを無して、作業員たちは際よく段ボールのをトラックの荷台へと戻し始めた。 ガラガラと音をててシャッターが閉まり、トラックが逃げるようにりっていく。
玄関先に残されたのは、私と音、そして肩を激しくさせてち尽くす夫のだけだった。
向かいののが、物珍しそうにこちらの様子を伺っている。 世体を何より気にする夫にとって、昼堂々、所の目ので妻に契約を叩き返されたという屈辱は、耐え難いものだったはずだ。
「……お、自分が何をしたか分かってるのか」
夫の声は、くをうように濁っていた。 拳がくなるほど握りしめられ、今にも殴りかかってきそうな殺気を放っている。
「である俺の顔に、を塗りやがったな」
「?」
私はで笑った。
「、を空けておいて、都のいいだけを名乗らないで。に入りましょう。話の続きは、でやります」
私は鍵をけ、音を先にのに入れた。 靴を脱ぎながら、バッグから通の茶封筒を取りした。 反撃の第は、すでに私ののにあった。
リビングのローテーブルを挟んで、私たちは対峙していた。
夫はコートを着たままソファに沈み込み、テーブルのの瓶を睨みつけている。
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その目は完全に据わり、理性を失いかけていた。
「もういい」
夫が、酷な宣告をすようにをいた。
「おたちとは、ここまでだ。来週、俺はで名古へく」
「ええ、どうぞ」
「がるなよ」
夫は嘲笑を浮かべ、指先をテーブルに突きてた。
「俺が単赴任でくということは、このを引き払うということだ。来末で賃貸契約は切れる。俺は名古の社宅に入るが、おたちにむ所はないぞ。敷も礼も、しいアパートの契約も、俺は円もさん。活費の送も、今限りで完全に止する」
夫はを乗りし、私の顔を覗き込んできた。 恐怖を植え付け、座させようとする、あからさまな脅迫。
「音の学の入学? 授業料? すわけがないだろう。父親をコケにした娘に、なぜ俺が何百万円も払わなきゃならんのだ? おで、そので、賃を払って娘を学にかせてみろよ! ヶも持たずに泣きついてくるのがオチだ!」
「泣きつきません」
私は平然と答え、バッグから取りした茶封筒から、枚の類を引き抜いた。
バサリ、と夫の目のに置く。
「……何だ、これは」
「庭裁判所に提する、『婚姻費用分担請求調申』の控えです」
夫の眉がねがった。
「こ、婚姻費用……?」
「ええ。あなたがで名古にこうが、私たちをこのから追いそうが、法律の婚姻関係が継続している以、あなたには私たちを養う義務があります。
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先ほど計算しました。あなたの収から算定すると、毎万千円です」
夫の目が、泳ぎ始めた。 類に印字された『京庭裁判所』の文字を、信じられないものを見るように見つめている。
「ふ、ふざけるな! 別居の原因を作ったのはおたちだろうが! ついて来ない妻に、なぜ活費を払わなきゃならんのだ!」
「転勤への同拒否は、責事由にはなりません。特に今回は、子どもの学受験という理な理由がある。調になれば、、私の主張が認められます」
私は髪を入れずに畳み掛けた。
「もし支払いを拒否すれば、料の差し押さえに入ります。あなたの名古支社の与担当部署に、裁判所から直接通がいきますよ。『しく着任した営業第課は、族への活費を滞納して料を差し押さえられた』……支社の先輩に、顔向けできますか?」
「き、貴様……!!」
夫がちがり、テーブルのの類を掴んで破り捨てようとした。
「破いても無駄よ」
私はたく言い放った。
「原本はすでに弁護士事務所に預けてあります。あなたが名古へ発った瞬、裁判所に提されます」
夫のきが、ピタリと止まった。 振りげた両が、震えている。 社会な体裁、会社での、世の。 自分が番切にしてきた鎧を、確に狙い撃ちされたのだ。
「それから、む所の配もいりません」