みかん小説
本棚

"5年ぶりに帰宅した夫と、もう父親を必要としない家族" 第7話

『に話したらに払いされた。どういう教育をしてるんだ。く帰ってこい』

……どういう教育? あのは、私の職すら自分の部か請け企業のように見なしているのだ。 全の毛穴がりで逆つ覚を覚えながら、私は駅のスーパーには寄らず、に自宅へと向かった。

玄関のドアをけた瞬、温い油とアルコールの匂いがを突いた。

「遅いぞ、由紀子!」

リビングから、気を孕んだ夫の鳴り声がんできた。 靴を脱いでがると、そこには目を疑うような景が広がっていた。

ローテーブルのには、所の総菜で買ってきたとわれる焼き鳥のパックと、刺の盛りわせ。 散乱するビールの空き缶。 そして、そのテーブルの端で、肩をすぼめるようにして座らされている音の姿があった。

娘のにはかれた参考が冊もなく、代わりに夫の脱ぎ捨てた靴と、名古のマンションのカラーチラシが広げられていた。

「お父さん、もういいでしょ? 私、自習に戻らなきゃいけないの。今の分の過問が終わってないの」

音の声は、泣きしそうに震えていた。

「うるさい! 父親が阪から帰ってきてるんだぞ! 族全員で卓を囲むのが筋だろうが! 予備なんてくらい休んだってにはしない!」

夫は赤ら顔で缶ビールを煽り、娘の目のでチラシを指先で叩いた。

広告

「見ろ、この社宅。名古のキャンパスもいし、名だって通える。京の学に落ちて浪するくらいなら、向こうの指定推薦枠を今から探した方がよっぽど現実だ。おのためをって言ってやってるんだぞ」

「やめて!」

私は靴を脱ぐもなくリビングに踏み込み、夫と娘のに割って入った。

「音、部にきなさい。自分の机で勉して」

「あ……お母さん……」

音は弾かれたようにちがった。

「待て、音! 誰が席をっていいと言った!」

夫が鳴り声をげたが、私は娘の背を押し、リビングのドアをピシャリと閉めた。 パタパタと階段を駆けがる音が聞こえ、階のドアが閉まる音がした。

リビングに残されたのは、私と、酔っ払って目を血らせた夫のだけだった。

「お、いい度胸だな」

夫はソファにどっかりと座り直すと、テーブルののチラシを乱暴に繰り寄せた。

「母親がそんな甘い顔をしてるから、音の性根が曲がるんだ。父親の苦労もらんで、自分の都ばかり主張しやがって。それから、おののは何なんだ? 夫である俺がわざわざ話してやってるのに、『個報ですので』の点張りだ。夫に妻の退職期を教えない職がどこにある!」

「当たりでしょう」

私の声は、くえ切っていた。 自分でも驚くほど、の波が引いていた。

広告

目のにいる男が、かつてして結婚した相だとは、もう到底えなかった。

「は当然の対応をしただけです。それより正弘さん、あなた何様のつもり?」

「……何だと?」

「私の職に勝に話して、退職の続きを聞きす? 私の信用をで踏みにじって、何が楽しいの? 私の仕事は私の契約よ。あなたに私の労働契約を解除する権利なんて、法律のどこを探してもないわ」

「法律だと!?」

夫がバッとちがった。 柄な体が覆いかぶさるように迫ってくる。 威圧。会社で部を黙らせるに使っているであろう、肉体な圧力。

「偉そうなを利くな! 俺の稼ぎでこのが回ってるんだぞ! おの雀の涙みたいな料で、音の予備代が払えるのか!? このの賃万が払えるのか!? 現実を見ろよ! 俺が活費の座を止めたら、おたち、からに迷うんだぞ!」

活費を止める。 その言葉がた瞬、胃の腑が雑巾のようにきつく絞られた。

脅迫だ。 経済な首輪を締めげることで、妻と娘を屈させようとしている。 、くれた阪から「苦労をかけるな」と送られてきていた活費は、族へのなどではなかった。 いつでも引き抜くことのできる、殺与奪のロープだったのだ。

「止めたければ、止めればいいじゃない」

私は夫の目をまっすぐに見据え、歩も引かなかった。

「……何?」

「止めてごらんなさいよ。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: