"5年ぶりに帰宅した夫と、もう父親を必要としない家族" 第4話
……はい、族の件も全く問題ありません。妻に話しましたら、ぜひ夫のれ台を支えたいと、放しでんでおりましてね」
の裏から、たい針が突き刺さるような覚がった。
「娘ですか? ええ、ちょうど受験期ですが、父親の背を見せる良い会だと納得させました。向こうのへの転続きも、妻が責任を持ってめると申しております。庭のバックアップ体制は完璧ですので、私は百パーセント、名古の営業に専できます」
く品のない笑い声が、通話の向こうから漏れる。
「はい、単赴任の連は庭崩壊だなんだと音を吐きますが、うちは違いますから。である私の言葉には、妻も娘も絶対に従いますよ。ええ、昭の頑固親父と言われようと、これが番仕事に集できる形です。はい、来の着任初、楽しみにしております。失礼いたします」
ツーツーという無質な終話音が響いた。
私は、暗い廊にち尽くしていた。
放しでんでいる? 庭のバックアップ体制は完璧?
あのは、妻の拒絶も、娘の涙も、最初からしないものとして処理していたのだ。 自分の世のために。 会社の層部に「庭を完璧に掌握している頼もしい管理職」として自分を売り込むための、ただの飾りとして。
、夫が阪へ旅ったのことをいす。
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幹線のホームで、「留守の、苦労をかけるな。俺がいない、由紀子がこのの主(あるじ)だ」と、神妙な顔で私のを握ったあの。
嘘だった。 あのは私をの主にしたのではない。 ただ、自分がで自由に羽を伸ばし、男としての体裁を保つための、無料の留守番係として放置しただけだったのだ。
私がどれだけの夜を、で乗り越えてきたか。 音がインフルエンザで識を失いかけた夜、がるなか、娘を背負ってタクシーを拾おうと幹線までった私の靴のさを、あのはらない。 ドラッグストアのバックヤードで、い段ボールを担ぎながら、登録販売者の参考をポケットに突っ込んで用語を暗記した私の爪の痛みを、あのはらない。
らないのではない。 る気配すらなかったのだ。
私は、胸に抱いていたパンフレットをく握りしめた。 指先に、確かな痛みがる。
「……絶対に、渡さない」
声にはさず、のでだけ呟いた。
私たちが積みげてきたを。 音の未来を。 そして、私が私としてきるために勝ち取ったこの所を。
あんな男の勝な見栄のために、ミリたりともけ渡してなるものか。
寝のドアノブにをかけようとしたその、部のからベッドが軋む音が聞こえた。 夫が横になり、数分もしないうちに、図太い鼾が廊にまで響き始めた。
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私は静かに背を向け、暗い階段を段ずつりた。 リビングのテーブルのには、まだ夫がみ散らかしたビールの空き缶と、え切った豚カツの脂がく固まっていた。
私はかりを消さず、台所の引きしから冊のノートを取りした。 それは、、私が円単位で記録し続けてきた、このの本当の計簿だった。
翌朝、午。
の空がみ始めた頃、私はすでに制であるドラッグストアの紺のポロシャツのに、のカーディガンを羽織っていた。 朝番の搬入作業があるため、半にはに入らなければならない。
キッチンでお湯を沸かし、音のための弁当箱に卵焼きとプチトマトを詰める。 ご飯のには、娘の好きなちりめん椒を散らした。
「おはよう、お母さん」
制に着替えた音が、リビングに入ってきた。 目は赤く腫れていたが、髪はきちんと結ばれ、カバンには参考が詰め込まれている。
「おはよう、音。よく眠れた?」
「……うん。あんまり眠れなかったけど、丈夫」
音の線が、テーブルの隅に置かれた青いパンフレットに止まった。 私が昨夜、しを乗せてできる限り皺を伸ばしておいた、京学芸学の案内だ。
娘の瞳が、微かに揺れた。
「これ……ゴミ箱に落ちてたのを、お母さんが拾ってくれたの?」
「落ちてたんじゃないわ」
私は音の目をまっすぐに見つめた。
「お父さんが捨てたのよ。