"「前のパパをこっそり好きじゃダメなの?」" 第11話
引き攣った叫びだった。
「ぼくが言ったら……のパパ、もう消えちゃうんでしょ?もう、ぼくのパパじゃなくなっちゃうんでしょ?!ぼく……ママのために……パパを殺しちゃった……っ!!」
「そんなことない!そんなことないわよ、陽太!!」
「ぼく、嘘つきだ……!修おじさんのこと、本当のお父さんだなんて、ってないのに……!嘘ついたから……お腹が痛いよ……ばあば、苦しいよ……っ!!」
歳の男の子が、胸をかきむしりながらを転げ回っていた。
の都で作られた「完璧な族」という名の虚構。 その代償として、この子は自分の臓を素で握り潰されるような激痛に耐えていたのだ。
もう、分だった。
これ以、この子をの贄にしてはならない。 世体?初婚の男のプライド?母子庭を脱したい娘の焦り? そんなもののために、このさな命の尊厳が踏みにじられてたまるものか。
私の胸の奥で、何かがパチンと音をてて千切れた。 、娘のために耐え忍び、波をてないよう押し殺してきた「物分かりのいい母親」が、完全にんだ瞬だった。
私はハンカチで陽太の元を拭い、たいで顔を洗わせた。 ブレザーを脱がせ、と汗で汚れたシャツのシワを伸ばす。
「陽太」
私はあの子の両肩を掴み、その濁りのない瞳をまっすぐに見つめた。
「ばあばが、全部終わらせてあげる」
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陽太は、怯えたように瞬きをした。
「あなたは、何も悪くない。誰のことも、殺してなんかいない。……ばあばのを、しっかり握っていなさい」
私はちがり、自分のハンドバッグのファスナーをけた。
底くに沈んでいた、つのものを取りす。
つは、陽太がゴミのから救いし、私のエプロンのポケットに託した、あの塗装の剥げ落ちた青いのオモチャ。 もうつは、今朝、庭裁判所から速達で届いた、「面会交流調」の正式な期呼状と、分の養育費括振込の証のコピー。
私は陽太のたいさなを握り締め、個をた。
料亭のい廊を、歩、歩、踏みしめるように歩いていく。 音は驚くほど静かで、しかし、度と引き返さない決に満ちていた。
個のに辿り着くと、からは修さんの苛った声が漏れ聞こえていた。
「……まったく、事な席でこれじゃ先がいやられますよ。美咲さん、君の躾はどうなってるんだ?」 「すみません、本当にすみません……あの子、普段はこんなこと……」
ピシャリと、襖をに引きけた。
部のの線が斉にこちらへ集まった。 修さんの母親は眉を吊りげ、美咲は青ざめた顔で私を睨みつけている。
「陽太!あなた何やって――」
美咲がちがりかけた、そのだった。
私は陽太のを引いて部の央へみると、朱塗りの祝い膳の、まさに真ん。
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箔の乗った鯛の姿焼きのすぐ横に、
ガタンッッ!!
と、激しい音をてて、あの壊れかけた青いを叩きつけた。
鯛の皿がね、お吸い物の汁がのテーブルにび散る。
「……なッ?!」
修さんの父親が息を呑んだ。 節子さんは「いやだ!」とい鳴をげ、着物の袂で顔を覆った。
「な、何をするんですかお母さん!気でも狂ったのか?!」
修さんが声とともにちがった。 完璧だったエリートの仮面が剥がれ落ち、額に青筋が浮きている。
「汚いオモチャを、祝いの席に持ち込むなんて……!常識がないにも程がある!」
「常識?」
私の声は、自分でも驚くほどく、え切っていた。
私はバッグからもうつの束――裁判所の印が押された類を、青いの横に叩きつけた。
バサリ、と類が広がる。 そこには、『佐伯輔』の名と、庭裁判所の公印、そして『調期通』の文字が、赤黒い朱肉とともにくっきりと浮かびがっていた。
「ひ……っ」
美咲が、喉の奥で息を呑んだ。
「これは、陽太の実の父親から届いた、庭裁判所の面会交流調の通です」
私は、凍りついた宮本の両親を、そして修さんを、射抜くように見据えた。
「父親は、分の養育費百万円を括で振り込み、正式に親子の面会を求めています。この子は、父親に捨てられたのではありません。そして、父親を忘れてもいません」
「お母さん、やめて!!」
美咲が半狂乱になって叫び、テーブルにを乗りしてきた。