"「前のパパをこっそり好きじゃダメなの?」" 第7話
「美咲……どうしたの、こんなに」
「どうしたのじゃないわよ!」
娘は靴も脱がずににがり込み、私の胸元を両で突きばすように掴んだ。
「何で修さんに会いにったの?!何で余計なこと言ったのよ!!」
リビングのかりの、美咲の顔は涙とでぐしゃぐしゃだった。鬼のような形相。そこには、母親としての理性など微も残っていなかった。
「修さん、ひどくってたわよ!『君のお母さんには僕の誠が通じないようだ。この結婚、もう度考え直した方がいいかもしれない』って……言われたのよ?!どうしてくれるのよ!!」
「美咲、落ち着きなさい。陽太が――」
「陽太、陽太って、あの子のことばっかり!私の気持ちはどうなるのよ?!」
美咲は私の肩を激しく揺さぶった。爪が、羽織越しに私の肉にい込む。
「私はね、あの男に捨てられてからの、獄をきてきたのよ!スーパーの見切り品の惣菜を半分こして、も全部おがりで、友達が族で旅にってるのをSNSで見ながら、夜にで泣いてたのよ!母さんにあの惨めさが分かる?!分かるわけないじゃない、お父さんと添い遂げた母さんに!!」
「美咲……」
「修さんはね、私をあの獄から救いしてくれた唯のなの!並みの暮らしをさせてくれて、堂々とを歩かせてくれるなのよ!あの子がちょっとすれば、全部うまくいくの!何でそれを母さんが邪魔するのよ!私の幸せを壊さないでよ!!」
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狂乱した叫び声が、狭い本の廊に響き渡る。
そのだった。
ギィ……と、廊の奥の引き戸が、かすかにいた。
暗い廊の突き当たり。脱所のに、さながっていた。パジャマ姿の陽太だった。靴も履かず、たい板のに素でち尽くし、真っ青な顔で母親を見つめていた。
あの子は、全部聞いていたのだ。母親が、自分ののせいでどれほど惨めないをし、今また自分のせいで幸せを失いかけていると叫ぶ声を。
「……あ」
美咲が、固まった。陽太の線に気づいた瞬、娘の顔から血の気が引いていく。
「陽太……なんで、起きて……」
美咲がを伸ばそうとした。けれど、陽太はそのから逃げるように、音もなく歩、ずさりをした。その瞳には、涙すら浮かんでいなかった。ただ、果てしない絶望と、「僕が全部悪いんだ」という底なしの自責のだけが、暗く澱んでいた。
沈黙が、く部を支配した。計の秒針の音だけが、やけにきく響く。
翌の午、私のに通の簡易留が届いた。差の欄を見て、私の臓がきくねがった。
『京庭裁判所』
そして、申の名。
『佐伯 輔』
美咲の元夫であり、陽太の実の父親だった。封筒のには、正式な裁判所の印が押された「面会交流調申」の謄本。そして、枚のの振込細のコピーが同封されていた。
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そこには、この、度も支払われなかった養育費の総額――百万円いが、美咲名義の休眠座に括で振り込まれた記録が印字されていた。
夕方、事態をった美咲が、血相を変えて再び実に現れた。仕事帰り、にはスーパーの買い物袋を持ったままだった。
テーブルのに置かれた裁判所からの通と振込細を見るなり、美咲のから買い物袋が滑り落ちた。キャベツと牛乳パックが、畳のに転がる。
「……何これ」
美咲の声が、く震えていた。
「輔さんからよ。調を通じて、正式に陽太との面会を求めたいって。今までの養育費も、全額――」
「ふざけないでよッッ!!!!」
美咲が絶叫した。
娘は狂ったようにテーブルのの類をひったくると、両で力任せに引き裂いた。ビリッ、ビリビリッ、と分い公用が音をてて裂けていく。
「何が養育費よ!何が面会よ!放ったらかしにしておいて、私が再婚するっての噂で聞いたからって、邪魔しにきただけじゃない!今さら父親面するな!!」
美咲の目は完全に据わっていた。引き裂いた類の破片を、元で踏みつけ、さらに細かく千切りにしていく。
「絶対に会わせない!あんな男、陽太の父親でも何でもない!んだのよ、あの男はにんだの!!」
娘は台所に駆け込むと、シンクの横にあったゴミ用の角コーナーを引っ掴んだ。