"「前のパパをこっそり好きじゃダメなの?」" 第4話
環境の変化についていくだけでも精杯な期です。名字を変えるのも、お父さんと呼ぶのも、もうしあの子のペースにわせてもいいのではないでしょうか」
修さんの表が、すっと引いていくのが分かった。 元には笑みを貼り付けたまま、球だけが徹に私を値踏みしていた。
「お母さん」
静かな、しかし無を言わせない響きだった。
「僕は、初婚です」
修さんは両をテーブルので組み、わずかに傾姿勢になった。
「僕の両親も、親戚も、僕がバツイチで子持ちの女性と結婚することに、決して放しで賛成しているわけではありません。『宮本の跡取りが、の連れ子を育てるのか』と、周囲からどれだけ言われたか、お母さんには像がつきますか?」
喉の奥が、からからに渇いていく。
「それでも僕が美咲さんと結婚するのは、彼女をしているからです。そして、陽太くんを僕の本当の息子として育てる覚悟があるからです。僕は、このマンションの千百万のローンをで背負いました。陽太くんの将来の教育費も、全て僕が面します」
修さんの指先が、トントンと養子縁組届を叩いた。
「それだけの責任を背負う僕が、のでいつまでも『修おじさん』と呼ばれ、のような顔をされ続ける。そんな理尽に耐えろとおっしゃるんですか?」
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「そういうで言ったのでは……」
「同じことです」
酷なまでの正論だった。 本の、産階級の男が背負う「世体」と「責任」の鎧。 そのみを盾にして、修さんは切の隙を見せなかった。
「途半端なけは、あの子のためになりません。の父親のを完全に断ち切る。過を切持ち込ませない。それが、僕がこの子を宮本のとしてするための、絶対の条件です」
修さんはちがり、窓のの暮れなずむを見ろした。
「来週から、あの子には僕を『お父さん』と呼ばせます。過の父親の話は、このでは切のタブーにします。お母さんも、あの子ので余計な昔話を吹き込むような真似は、絶対にやめてください」
それは、お願いではなかった。 確な、通告だった。
ガチャリ、と玄関のドアがく音がした。
「ただいまー!ポスト、修さんの名の郵便がいっぱい届いてたよ!」
美咲の弾んだ声が、廊に響く。 その音に混じって、トテトテというさな音がづいてきた。
リビングの引き戸が、細くいた。
そこにっていたのは、空っぽのリュックを胸に抱きしめた陽太だった。
あの子の顔から、完全に血の気が引いていた。 いたドアの隙から、テーブルのの「養子縁組届」と、仁王ちする修さんの背を、見つめていた。
を失った、真っ暗な瞳。
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そのさなは、違いなく今の会話を、言句逃さず聞いていた。
修さんが笑顔で振り返る。
「おかえり、陽太。さあ、洗いうがいをしておいで」
完璧な父親の声。 陽太は、ピクリともかなかった。 ただ、胸のリュックを爪がい込むほど抱きしめ、息をすることすら忘れたように、私たちを、暗の底から見つめ返していた。
居へ引っ越して週が過ぎた頃から、陽太の様子がらかに変わり始めた。
子ども特の、あの慮のないわがままが、綺麗さっぱり消え失せていた。
夕のテーブルで、修さんが麦茶のピッチャーにを伸ばす。それだけで、陽太はビクッと背筋をねげ、両で自分のコップを差しす。
「あ……ありがとうございます、お父さん」
擦った、乾いた声。の嫌を損ねないよう、ので何度もリハーサルを繰り返した末にてくるような、自然な敬語。
それを見るたび、私の胸の奥に、たい針が本ずつ突き刺さるような痛みがった。
娘の美咲は、それに気づかない。満そうに目を細め、並べられたハンバーグの皿を取り分けながら笑っている。
「ほら、陽太。お父さんがお仕事帰りに買ってきてくれた級メロンもあるわよ。ちゃんとお礼言ったの?」
「うん。お父さん、いつも美しいもの買ってくれて、ありがとう」
陽太は笑っていた。けれど、その笑顔はどこか貼り付けた仮面のようで、目元だけがんだ魚のようにかない。