"「子どもがいないから」と義妹の長男を譲ろうとする義家族" 第18話
お茶とお菓子を用して待ってるね』
ちょうど。 インターホンが、軽やかに鳴った。
ドアスコープを覗くと、し背の伸びた悠真と、すっきりと髪を束ねた美穂の姿があった。 鍵をけてドアをける。
「いらっしゃい」
「おばちゃん!」
びねるようにして、悠真が満面の笑みを浮かべた。 には、真しい恐竜の図鑑を抱きしめている。 その顔には、半のような怯えや、の顔を窺う痛々しさは欠片も残っていなかった。
「お義姉さん、お邪魔します。これ、駅の美しいケーキさんのフィナンシェです」 美穂が産の袋を差ししながら、柔らかく微笑んだ。
あれから、美穂の庭はきく変わった。 翔太は結局、会社にをげて半の育休を取得した。 夜泣きに対応し、悠真の保育園の送り迎えを毎こなすで、かつての傲さは消え失せ、今ではすっかり庭の活に叩き直されたという。 義母はというと、美穂から「過干渉を続けるなら絶縁する」と通告され、すっかり毒気を抜かれてしくなったらしい。
リビングのテーブルで、でお茶をんだ。 悠真はになって図鑑のページをめくり、「おばちゃん、これ見て! ティラノサウルス!」と無邪気に声をげる。
「悠真くん、すごいね。名、全部覚えたの?」
「うん! パパと緒に覚えたんだよ!」
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誇らしげに胸を張る悠真の姿を見て、胸の奥がじんわりと温かくなった。 父親を拒絶していたあの子が、父親と緒に覚えたことを嬉しそうに話している。 あの、私が酷に突き放し、親たちに責任を背負わせたことは、決して違っていなかったのだ。
。 美穂がちがり、空になったカップをキッチンへ運ぼうとした。
「美穂ちゃん、いいのよ。私が片付けるから」
「あ、すみません。……悠真、そろそろお約束のよ。妹ちゃんがお昼寝から起きるから、おに帰ろうね」
「はーい!」
悠真は自分で図鑑をリュックにしまい、玄関へ向かってトコトコとっていった。 靴をきちんと揃えて履き、振り返る。
「おばちゃん、今ね、すっごく楽しかった!」
「私も楽しかったよ。来てくれてありがとうね」
しゃがみ込んで目線をわせると、悠真はふと、しだけ真面目な顔をして首を傾げた。
「おばちゃん」
「ん?」
「僕、また遊びに来ていい?」
あのの、駅のホームでの問いかけが脳裏をよぎる。 『僕、今からおばちゃんので暮らすの?』と泣いていた、あののさな背。
私は微笑み、悠真のを優しく撫でた。
「もちろんよ。お母さんとお父さんと相談して、もってお約束してくれたら、いつでも歓迎よ」
「うん! 約束する!」
悠真は元気よく頷き、美穂のをぎゅっと握りしめた。 母と子のが、しっかりと結ばれている。
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もう、誰もそのを引きすことはできない。
「お義姉さん、ありがとうございました」 美穂がく礼し、は並んでマンションの廊を歩きしていった。 角を曲がる直、悠真がもう度振り返って、ちぎれるほど激しくを振った。 私も、笑顔でを振り返した。
パタン、と玄関のドアが閉まり、静寂が戻ってきた。
私はリビングへ戻り、窓辺にった。 の柔らかいが、レースのカーテンを静かに揺らしている。
あの。 悠真に「ママに捨てられたの?」と聞かれた。 私のは張り裂けそうだった。 で、抱きしめて、全部引き受けてしまいたくなる衝がなかったと言えば嘘になる。
けれど、たちので番恐ろしいのは、誰も助けてくれないことではない。 誰もが「あなたのためをって」という顔をしながら、誰も相の痛みに向きおうとせず、誰かの犠牲のに易な解決を築きげようとすることだ。
子供には、誰かの世話が必だ。 けれど、その「誰か」という言葉で、都よく誰かのを奪っていいはずがない。
私は、悠真が好きだ。 これからも、困ったには恵を貸し、たまに遊びに来たには全力で甘えさせてあげるだろう。
けれど、誰かをすることと、その子の親のを代わりに背負って自分をけ渡すことは、絶対に違う。
自分のでち、自分のの主権を握りしめて、初めては誰かと健全にを繋ぐことができるのだ。
私は奥の部へ戻り、ソーイングテーブルのに座った。 夕暮れの優しいが、とりどりの布の端切れを照らしている。
針にしい糸を通す。 指先にチクリとる微かな痛みが、私が私としてきている確かな証のようにえた。