"息子の成人式で夫は言った「お前は本当の母親じゃない」" 第13話
全部、僕がかったせいです。 親父の嫌を損ねるのが怖くて、本当の母親に嫌われるのが怖くて……番切にしなきゃいけないを、番傷つけました」
ゆく所の主婦が、物珍しそうにこちらをチラリと見る。 かつての私なら、所迷惑を恐れて、慌ててあの子をたせてのへ招き入れていただろう。
けれど、私はかなかった。 ただ、たいので、あの子の背を見つめていた。
これは、悠斗が越えなければならない、としての最初の境界線だ。
「……これ」
悠斗は顔をげ、震える両での封筒を差しした。
「バイト代、借りしてきた。 来週の曜……もう度、あの写真館、予約したから」
封筒のには、写真館の予約票が入っていた。 予約者の名は、『悠斗』。 親の名義でも、夫のでもない。 歳になったあの子が、自分の名で、自分ので配した証だった。
「美奈子さんにも……僕から連絡した。 ちゃんとお礼を言って、これまでのことも話して……の写真、撮るならそのに来てほしいって頼んだ。 親父には、来なくていいって言った」
悠斗の瞳から、ボロボロと粒の涙が零れ落ちる。
「真理子さん。 頼むから……もう度だけ、僕と緒に、写真館にってくれませんか」
をげ続ける息子。 その首には、私がの入学祝いで買ってあげた、し傷のついた物の計が巻かれていた。
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、私が注いできたは、すべてが無駄になったわけではなかった。 あの子は、父親の呪縛を断ち切り、自分の罪と向きう痛みを、自分ので引き受けようとしていた。
「……悠斗」
私は、予約票を受け取った。
「美奈子さんも、呼んだのね」
「うん……で無理やり並ぶつもりはない。 美奈子さんは美奈子さん。真理子さんは真理子さん。 僕が……に、それぞれ向きわなきゃいけないから」
その言葉を聞いた瞬、私の胸の奥で、カチリと何かがれる音がした。
「わかったわ」
私は静かに答えた。
「きましょう。あなたのに度の、成式だもの」
悠斗は顔を覆い、子供のようにそので泣き崩れた。 私はあの子の背にを伸ばしかけて――けれど、そっとを引いた。
もう、過剰に甘やかす母親には戻らない。 互いに独した、のとして向きうために。
曜。 写真館の扉をけると、あのの乾いたシャッター音がに蘇った。
スタジオの空気は、あのとはまったく違っていた。
カメラマンは、私たちの顔を覚えていたのだろう。 し緊張した面持ちで、けれどく丁寧に礼した。
「悠斗様、ご予約ありがとうございます」
スタジオの隅には、すでに美奈子がっていた。 あのと同じベージュのコートではなく、落ち着いたネイビーのスーツ。 化粧もく、髪もすっきりと束ねていた。
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美奈子は私を見ると、さく息を呑み、歩み寄って々とをげた。
「真理子さん。今……ち会わせてくださって、ありがとうございます」
「いいえ。悠斗が決めたことです」
私たちは、友達のように笑いうことも、を取りうこともしなかった。 ただ、互いのと距を弁えた、静かな会釈を交わした。 それで分だった。 無理な解など、必ない。
「では、まず悠斗様のおのお写真から参りましょう」
カメラマンの声。 羽織袴にを包んだ悠斗が、スタジオの央へつ。 歳の青の、凛としたち姿。
続いて、カメラマンが美奈子を呼んだ。
「お母様、どうぞ」
美奈子は瞬、私の方を躊躇いがちに見た。 私は静かに頷いた。
美奈子が央へ歩みる。 悠斗の隣に並び、ぎこちなく、けれど確かな血の繋がりをじさせるつの顔が並んだ。
カシャリ。
ストロボがる。 の空を埋めるための、第歩の写真。 その景を、私はスタジオの脇のソファから、穏やかなで見つめていた。 もう、喉の奥が乾くことも、胸が引き裂かれることもなかった。 あの所は、あのが引き受けるべきだ。
「続いて……真理子様、どうぞ央へ」
カメラマンの声が響いた。
悠斗が、スタジオの真んから、私に向かってきくを伸ばした。
「真理子さん。真ん、来て」
あの子の真っ直ぐな瞳。
罪悪ではなく、純粋な敬と謝が宿った。