"息子の成人式で夫は言った「お前は本当の母親じゃない」" 第11話
自分のプライドを満たすためのトロフィーとして、元に置いていただけよ!」
「黙れ! 養ってもらってる分際で、調子に乗るな!」
夫が逆し、テーブルののガラスの皿を掴んだ。 私に向かって振りろされようとした、その。
バァン!
リビングの引き戸が、壊れるような音をてていた。
「悠斗……?」
夫のが止まる。
そこにっていたのは、悠斗だった。 肩で激しい息をし、全をりで震わせている。 そのには、茶く変した枚の原稿用が握りしめられていた。
「お……今までどこに……」
夫の言葉を遮り、悠斗がダイニングテーブルへ股で歩み寄った。
そして。
バシィッ!!
乾いた破裂音が、静まり返った部に響き渡った。
原稿用が、夫の目のに叩きつけられた。
「……悠斗、これ、何だい?」
義母が恐る恐る覗き込む。
叩きつけられたのは、悠斗が学を卒業するときにいた、文集の稿だった。 押し入れの奥の、鍵のかかる夫の類箱から引っ張りしてきたのだろう。
原稿用のタイトルには、こうかれていた。
『ぼくのお母さん、真理子さんへ』
その文字のに、乱暴な赤のボールペンで、幾もの太い斜線が引かれていた。
余に殴りきされた、夫の跡。
『母親面させるな。き直せ。実の母親に失礼だろ。「うちの」に変えろ』
息が止まった。
界が、真っに染まる。
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悠斗が、私を「お母さん」と呼んでくれなかった理由。 文集で「で番起きする」としかけなかった理由。
あの子が私を拒んでいたのではなかった。 あの子の純粋な謝を、幼いを、この男が赤ペンで力任せに塗り潰していたのだ。
「悠斗……お、勝に親父の部を……」
夫の声が、けなく擦った。
悠斗は、血った目で父親を睨みつけていた。 の男の、く、腹の底から絞りすような号が爆発した。
「ずっと……ずっと議だったんだ!」
悠斗の目から、堰を切ったように涙が溢れした。
「どうして文集をき直させられたのか! どうして真理子さんのことを『お母さん』って呼ぼうとすると、親父が嫌そうに舌打ちしたのか! 俺は……俺はずっと、自分が悪いんだとってた! んでくれた母さんを裏切っちゃいけないって、親父にられるのが怖くて、、真理子さんに甘えることすらしてきたんだぞ!」
「悠斗、落ち着け、あれはだな……」
「落ち着けるかよ!!」
悠斗はテーブルを力任せに殴りつけた。 器がガタガタとねる。
「写真館であの、『このは親じゃない』って言ったのは親父だ! 真理子さんをの当たらない隅っこに追いやったのは親父だ! でもな……!」
悠斗は涙でぐしゃぐしゃになった顔を歪め、胸を掻きむしるように叫んだ。
「この、俺がをしたときに朝までを握っててくれたのは誰だ!? だらけのユニフォームを毎洗ってくれたのは誰だ!? 反抗期で荒れて壁を殴った俺に、泣きながら向きってくれたのは誰だ!? 親父じゃない! このを、本当の族にしてくれていたのは……全部、真理子さんだったんだよ!」
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静まり返ったリビングに、赤インクの滲んだ原稿用だけが横たわっていた。
誰も、声を発することができなかった。
夫は青ざめたまま、テーブルに両をついてち尽くしている。 さっきまで威勢よく喚き散らしていた義母も、孫の鬼気迫る号に怯え、ソファの隅でさくを縮めていた。
「……悠斗」
掠れた夫の声。 だが、悠斗はもう、父親の顔を見ようとはしなかった。
歳の息子の肩が、激しく波打っている。 頬を伝う涙を拭うことすら忘れたように、あの子はただ、の点を見つめていた。
「もういいよ」
悠斗は、く絞りすように言った。
「親父の顔なんて、見たくもない」
振り返り、私の横を通り過ぎるとき、あの子のが止まった。 私を見げるその瞳は、幼い頃のように赤く腫れ、痛々しいほどに揺れていた。
「……真理子さん」
何かを言いかけて、悠斗は唇を噛んだ。 そして、逃げるように玄関をびしていった。 夜のたいのに、ドアの閉まる鋭い音が響き渡る。
残されたのは、私と、夫と、義母のだけだった。
「真理子」
沈黙を破ったのは、夫だった。 その声には、先ほどまでの傲さは欠片もなく、けない焦りだけが滲んでいた。