"息子の成人式で夫は言った「お前は本当の母親じゃない」" 第7話
私のの記録を、あのに差しす義理なんてありません。見たいなら、自分たちでからいを作ればいいじゃない」
「おっ……!」
夫が拳を振りげた。空気が凍りつく。
「やめろよ、親父!」
悠斗が叫んで、夫の腕を掴んだ。
「もういいだろ! 母……美奈子さんも、そんな無理に持ってこなくていいって言ってたし!」
夫は悠斗のを振り払い、肩で息をしながら私を指差した。
「ていけ」
い、濁った声だった。
「そんなにが狭くて、の痛みがわからない女なら、このにいる資格はない。今すぐていけ!」
「健さん」
私は静かに言った。
「ていくのは、私ではありません。このの宅ローンの、私の独代の貯から百万していますよね。登記簿にも、私の持分が部入っています。法に、私をこのから追いす権利は、あなたにはありません」
夫の顔から、さっと血の気が引いた。
「それから、もうつ」
私はエプロンをし、ダイニングテーブルのに丁寧に畳んで置いた。
「今限りで、健さんとお義母さんの分の事の切を放棄します。事の支度、洗濯、部の掃除、病院の付き添い。ご自のことは、ご自でなさってください。私は、私のことだけをします」
「な……何を馬鹿なことを言ってるんだ! 放棄って、おは専業主婦だろうが!」
「ええ。でも、私はあなたの政婦ではありません。
広告
『好きで勝にやったこと』なんでしょう?なら、今から『勝にやらないこと』にします」
義母が「あんた、親を飢えにさせる気かい!」と喚き散らすのを背に受けながら、私は階段をがった。
取りは、驚くほど軽かった。膝の震えは止まっていた。、私を縛り付けていた「いい母親」「できた嫁」というい鎖が、音をてて砕け散っていくのがわかった。
曜。宅配便が届いた。
送り主は、あの老舗の写真館。平べったい、きな段ボール箱。宛名は「健様」。私が払ったのに、来がりの宛先は夫の名義に変更されていた。
リビングへくと、夫がすでに箱をけていた。
の縁取りが施された、な製の額縁。そのに収まっていたのは――あのの写真だった。
り輝くスタジオの央。羽織袴を着た悠斗を真んに、に誇らしげな夫、に微笑む美奈子。誰もが羨むような、完璧な「族の肖像」。
夫は交じりに、リビングの飾り棚へ向かった。
そこには、悠斗の学の入学式の写真が飾られていた。まだきすぎるランドセルを背負った悠斗のを、私が引き、ぎこちなく笑っている写真。私が、こので番切にしていた写真。
夫は、その写真を無造作に鷲掴みにすると、棚の隅のへ放り投げた。
ガシャン、とさな音がして、ガラスての角が欠けた。
広告
そして、空いた特等席に、あのの写真をどっかりと据え置いたのだ。
「よし、ぴったりだな。やっぱりがのリビングには、これが番似う」
夫が満げに腕を組む。
私は無言で歩み寄った。
に落ちた、学の入学式の写真。しゃがみ込み、拾いげる。ガラスの破片を指先で払い、埃を拭う。写真のの歳の悠斗は、私のをぎゅっとく握りしめていた。『真理子さん、さないでね』と言わんばかりに。
……もう、いいよね。
私はちがり、飾り棚の引きしをけた。そこに入っていた、幼稚園からまでの成アルバム冊。悠斗が初めていた私の似顔絵。母のにくれた、肩たたき券の残骸。
全部、抱えげた。
「おい、真理子。何やってんだ?」
夫が怪訝そうに眉を寄せる。
私は答えず、それらを自分の部へ運び、用してあった段ボール箱へと隙なく詰め込んでいった。私のい。私が流した汗と涙の結晶。このの共財産ではない。私だけの、誰にも奪わせない。
部のクローゼットから、私のをトランクへ詰める。通帳、印鑑、帳、保険証券。淡々と、械のように作業をめる。
「……真理子さん?」
ドアの隙から、悠斗が覗き込んでいた。
学から帰ってきたばかりの、いリュックを背負ったままの姿。部のの、積みがった段ボール箱と、かれたトランクを見て、あの子の顔からサーッと血の気が引いていくのがわかった。
「何してるの……? それ、荷造り……?」