"息子の成人式で夫は言った「お前は本当の母親じゃない」" 第3話
夫は瞬だけ気圧されたようにごもった。 けれど、すぐに嫌そうに顎をしゃくった。
「それは……おが好きでやったことだろ。誰も頼んでない」
――誰も頼んでない。
ので、何かがプツンと音をてて千切れた。 の奥が、キーンと甲い音をてる。 体の血液が、元へ引いていくような覚。
好きで、やった。 歳の、泣き叫ぶ子どもを抱きしめたあの夜も。 夜泣きに怯えながら、何度も「丈夫だよ」と背をさすったあのも。 夫にとっては「私が勝にやったこと」だったのだ。
夜、を回っていた。 夫はいびきをかいて寝息をてている。
私は眠ることができず、暗い廊を歩いて、階段の物置部に入った。 段ボール箱の奥。 悠斗が学を卒業したときのいの品をまとめた箱。 そこから、冊のい冊子を取りした。
卒業記文集。 ページをめくる。 指先が、微かに震える。
悠斗のいた作文のタイトルは、『で番起きする』。
『ぼくのには、毎朝に起きるがいます。 まだが暗いのに、台所でカチャカチャと音がします。 の寒いも、そのはぼくの筒にあたたかいお茶を入れて、たい靴をストーブのであたためて待っていてくれます。 ぼくが野球で負けたも、テストで失敗したも、そのは何も言わずに、ぼくの好きなハンバーグを作ってくれました』
文字を追うごとに、界が歪んでいく。
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涙が、のにポツリと落ちた。
けれど。
その作文のどこにも、「お母さん」という文字はしなかった。 最初から最まで、「その」「うちの」。
当、担任の先からこれを見せられたとき、私は「恥ずかしがりだから」と笑っていた。 男の子だから、母親のことを文集にくのが照れくさかったのだろうと。 自分に都よく言い聞かせていた。
でも、違った。 あの子ののには、最初から、私が決して踏み込めない境界線が引かれていたのだ。 どれだけご飯を作っても、どれだけを測っても、私は「産んでいない」であり、「便利な同居」に過ぎなかった。
「……真理子さん」
背で、掠れた声がした。
ビクッと肩がねる。 振り返ると、物置のドアの隙に、悠斗がっていた。
暗がりの、部着のままち尽くす歳の息子。 そのには、く細い封筒が握られていた。
「これ……受け取ってほしい」
差しされたい封筒。郵便番号の枠もない、無の細い封筒だった。糊付けもされていないから、札の渋沢栄の顔が微かに覗いている。
「……何、これ」
「写真代。万千円」
悠斗は線を私の元に落としたまま、掠れた声で言った。
「親父から聞いた。真理子さんが全部、払いでしてくれてたって。僕のバイト代からしたから。ちゃんとりてるとう」
物置の暗い裸球ので、息子のが微かに震えていた。
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喉の奥に、苦いものがせりがってくる。臓を、たい針でひと突きされたような痛みがった。
……お?
「どうして、あなたがこれを私に渡すの?」
「どうしてって……悪かったから」
悠斗は眉根を寄せ、言い訳を探すように線を泳がせた。
「あんなことになって……真理子さんが嫌ないしたの、わかってるから。だから、せめて写真代くらい、僕が自分で払わなきゃ筋が通らないっていうか……」
「筋?」
乾いた笑いが、喉から漏れそうになった。それを必でみ込む。
万千円。私が半、パートのシフトを週に増やして、ちっぱなしのレジ打ちで腰を痛めながら、しずつ貯めたお。悠斗が歳になったら、きちんとしたスタジオで、残る写真を撮ってあげたかった。そのいを、この子は今、茶封筒に入れた幣で清算しようとしている。
「悠斗。あなた、おを払えば、自分の罪悪が消えるとでもっているの?」
「え……?」
悠斗が弾かれたように顔をげた。
「違う。そんなつもりじゃ……」
「おで解決できるとわないで」
私は封筒を押し返した。指先がえ切っているのが、自分でもわかる。
「私が傷ついたのは、おを無駄にされたからじゃない。、あなたがをした夜も、学へけなくなった期も、私は度だってあなたに『育ててあげている』なんてったことはないわ。