みかん小説
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"息子の成人式で夫は言った「お前は本当の母親じゃない」" 第1話

「ご族の皆様、央へどうぞ」

カメラマンのるい声と同に、の袖をく引かれた。 着物の袂が擦れる、微かな絹の音。 振り返るもなかった。

「おは、ちょっとそこで待っててくれ」

夫のく抑えた声だった。 スタジオの隅へ、押しされるように歩、歩、ずさる。

……え?

何が起きたのか、が追いつかない。 今は悠斗の歳の誕。成の記撮。 私が半から老舗の写真館に予約を入れ、全額払いした特別なだ。

そのとき、スタジオのい遮カーテンを押しけて、の女性が入ってきた。

淡いベージュのトレンチコート。 丁寧に巻かれた巻き髪。 華奢な指先には、繊細なのリング。

女性は迷うことなく、悠斗の隣へ歩み寄った。

「……あの子の実の母親だ。今、わざわざ来てくれたんだよ」

夫が私の元で、さも当然のように囁いた。

臓が、ドクンと嫌なね方をした。 喉の奥が瞬でカラカラに乾く。

悠斗の実母。 、あの子が歳のときにをていった、あの。

カメラマンがファインダーから顔をげ、戸惑ったように私と夫を見比べた。

「あの……そちらの奥様も、ご緒に入られますか?」

私はをこうとした。 こののために、パートのシフトを増やして調した訪問着。 帯の締め付けが、急に胸を苦しくさせる。

悠斗を見た。 あの子と目がった。

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悠斗は唇を微かに震わせ、何かを言おうとして――けれど、線を元へ落とした。

「あ、いいです」

夫が遮るように言った。 なんの躊躇もない、軽やかな声だった。

「この、あの子の実の母親じゃないんで」

息が止まった。

スタジオの空気が、瞬で凍りついたのがわかった。 アシスタントの若い女性が、気まずそうに目を伏せる。 カメラマンはさく咳払いをし、「では、参ります」と声を張りげた。

カシャリ。

眩しいストロボのが焚かれる。 その烈ないのに、夫と、悠斗と、ベージュのコートの女性が並んでいた。 完璧な「族」の形。

私は、アンブレラ照の、の届かないにち尽くしていた。

。 私が積みねてきたは、夫のたった言で、スタジオの片隅へ掃きされた。

バッグのにある、革の帳。 そのポケットには、万千円と印字された写真館の領収が入っている。 宛名は「真理子様」。 悠斗が歳になったら、絶対にきちんとした写真を残してあげようと、私が半かけて積みてたおだ。

悠斗が歳のとき、健と再婚した。 母親の記憶がほとんどないあの子は、夜になると「お腹が痛い」と泣いた。 児科へ通い、夜通し背をさすり、幼稚園のだらけの靴を毎洗いした。 学の入学式、学の反抗期、の野球部のまみれのユニフォーム。

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毎朝に起きて作った段の弁当箱。

全部、私がやってきた。

「真理子さん」

撮が終わり、ベージュのコートの女性――美奈子がこちらへ歩いてきた。 控えめな、けれどどこか勝者の余裕をじさせる笑み。

「お久しぶりです。悠斗をこんなに派に育ててくださって……本当に、ありがとうございます」

……育ててくださって?

指先がたくなる。 それは、まるで留守番を頼んでいた政婦にかける言葉だった。

横で見ていた義母の枝が、わざとらしく目を細めて美奈子のを取った。

「いいのよ、美奈子さん。いろいろあったけれど、やっぱり血を分けた親子の縁は切れないものねえ。こうして並ぶと、の形なんて悠斗と瓜つだわ」

義母は、度も私の顔を見なかった。 、私がこのに嫁いだとき「妻なんて損な役回り」と吐き捨てた義母。 親戚の法事のたびに「所詮、血は繋がっていないから」とを叩いてきた義母。

誰も、私に「ありがとう」とも言わなければ、「悪かった」とも言わない。 夫も、義母も、美奈子も。 まるで、私がこのから綺麗さっぱり消え失せるのが、最初から決められていたシナリオであるかのように。

写真館をたあとの。 たいが、着物の裾を揺らした。

夫のに乗り込む。 美奈子は「私はこれで」とタクシーでっていった。 助席に私、部座席に悠斗。

内には、息が詰まるほどの沈黙が満ちていた。

「……おい、真理子」

ハンドルを握りながら、夫がバックミラー越しに言った。

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