"19歳で相続した呪われた屋敷" 第9話
医師の署名としずの署名が、父親の記録の横に並べられた。
くれた故郷の墓標に、ようやくその名が刻まれることになったのだ。
棚にあったつのさな遺品。
ショール、計、ブーツ、そして最の箱。
それらは、の教会の墓の片隅に埋葬された。
たった言、「旅たちをらかに」と刻まれた簡素なのに、緒に埋葬されたのである。
しずは、その代を、あの雑貨の女が釣り銭として余分に渡してくれ、ストーブのの壺に蓄えてきた貨で支払った。
10の終わりのある夕暮れのことだ。
しずは最の縁側にち、松林に黄のが溶けていくのを見つめていた。
背の尾根は、すでに青みを帯びた夜の気配をまとっていた。
犬は、彼女のブーツの横にを投げし、気持ちよさそうに顎を乗せていた。
のでは、お絹が夕の支度をしながら、楽しげに話しう声が聞こえていた。
の預けた馬が、柵の杭に繋がれている。
彼は、仕げられた類と、妻特製の梅ののジャムを持って訪れていた。
今まさに、台所でを洗っているところだった。
納の扉は、け放たれていた。
背板に「最」と焼きつけられた荷馬が庭に据えられている。
そのに半分焼き消されていたもうつの文字は、ののでの目によって、ようやく完全に読み解かれていた。
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それは、「黒」という文字だった。
しずは、のくぼみと松林と、静かな空へとまっすぐ昇る煙を見つめた。
黒崎像の顔など、もういそうともしなかった。
彼女の脳裏にあったのは、ただ父親の姿だった。
そして、あの裏で「が物を言う」と告げた老の姿である。
板が語った真実に対して、自分が成し遂げたことの全てが彼女の誇りだった。
が縁側にてきて、彼女の傍らに並びった。
しばらく静かに景を眺めた、彼は穏やかな声で尋ねた。
「これで全ての類が綺麗になった。今、おはこの所をなんて呼ぶつもりかね?」
しずは、尾根のを見つめたまま、犬のにそっとを置いた。
「ここは墓なんかじゃありません」
彼女は、静かに言った。
「ずっと誰かが帰って来るのを、待っていたつのよ」
は、度だけく頷いた。
それ以、何も言わなかった。
犬が、ゆっくりとしたい息をついた。
ので、子供の笑い声が鈴のように響いていた。
最の敷のに眠っていたさな最の箱。
そして、父親が残した震えるようなの文字。
それらは、しずの胸の内にい波紋を広げていた。
夜の静けさので、彼女はふと、くれた戸のでの々にいを馳せる。
それは、ほんの半のことだった。
しかし、両親を相次いで失った彼女にとって、その々はい過の来事のようにもじられていた。
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9に母を病でくし、それからの々は父と娘のだけの静かで慎ましい暮らしだった。
しずは先が器用だった。
質の裏で細々と細や用品の仕事をして、計をてていた。
父親の背は、いつもどこか疲れていた。
しかし、娘に向ける差しだけは温かい。
決して折れないのようなさを秘めていた。
ある晩のことだった。
父は病でひどく息を荒げながら、しずのさなをその両でしっかりと包み込んだ。
そののひらは、いの労苦によって固くごつごつしていた。
そして、驚くほどたく乾いていた。
父は、枕元に置いた古い製の箱を引き寄せた。
震える指先で、蓋をけた。
に入っていたのは、黒ずんだ真鍮のさな鎖と、幾にも折り畳まれた黄ばんだだった。
しずと父の声は掠れ、部の隅で揺らめく病のかりのように頼りないものだった。
「おには、ずっと隠してきたことがある。いや、隠さねばならなかったのだ」
父は、苦しそうに言葉を紡いだ。
「が最の族が代々背負い続けてきた、字架のような荷がな」
父はそう呟くと、微かに息を詰まらせ、激しく咳込んだ。
しずは、青ざめた顔で父の背を擦った。
「どうしてそんな話をするの」と、涙を堪えて尋ねた。
父は、首を横に振った。
枕元のを、彼女のに押し付けるように持たせた。