"19歳で相続した呪われた屋敷" 第8話
荷馬には、先ほどの母子を乗せている。
馬は、昨の今で彼女の顔を見た宿町のが、勝に使っていいよと無言で綱を渡してくれたものだった。
しずが最初に向かったのは、の代事務所だった。
彼女は、帳簿をの机のに置いた。
あの記録が記されたページをいた。
その傍らに、父親の遺を添えて置いた。
は、ゆっくりと文字を読みめた。
度読み返した。
顔をげた、その老いた目の端には、うっすらと涙が浮かんでいた。
しかし、その声は驚くほど平坦だった。
「この名、うちはわしもっている名だ」
しずは、まっすぐにを見た。
「ならば、目の季節のこともごですね」
は、静かに頷いた。
そして、これから彼女がやろうとしていることのを理解しているかと、静かに問いかけた。
しずは、迷うことなく答えた。
「はい」
は、壁の釘から自分のコートを取りした。
彼はしずと共に、のにある教会へと歩きした。
平には度も鳴らされたことのない教会の鐘が、突然鳴り響いた。
く、く、しかし力く打ち鳴らされた。
の々が、集まってきた。
、またと集まる。
エプロンをつけたままの雑貨の女。
袖をまくった鍛冶の男。
父親のを引いた、あの馬の。
酒の縁側から、子を胸に当てててきた老たち。
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しずは、教会の段のにった。
集まったたちに向けて、飾り気のない、しかし言句がはっきりと聞き取れる声で告げた。
「最の敷のには、隠された部があります」
彼女の父親の代よりもに、の旅がその所で命を落としたこと。
祖父や父親が、その事実を隠し通さざるを得なかった理由。
それは、真実を暴くことが自分たちの命を危険に晒すからではない。
本当の殺戮者を守るためでもない。
いや、むしろ真の犯罪者の名を隠蔽することで、族を守るためであったのだと語った。
「今の午、その板を全て取りします」
彼女は、力い線を群衆に向けた。
「見届けたい者は、誰でも来てください」
彼女の声は震えなかった。
涙を流すこともなかった。
彼女は、帳簿に記されたつの名をずつ読みげた。
つ目の名が読みげられただった。
群衆のろにいたの女が、わず両で自分のを抑えた。
午になり、々は馬や徒歩で最の敷へと向かった。
を始め、の鍛冶も同した。
そして、午に馬で迎えにかされた隣のの医者も同していた。
その医師は、清潔なをした痩せた髪の男である。
彼はランプをにすると、の踊りのい粘のに膝をついた。
あの棚に並べられたショールや計、さなブーツを、いをかけて検分した。
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やがて、静かにちがった。
「おの父親がき残したことは全て真実だ」
医師は、厳粛な面持ちで言った。
「どんな法廷のでも、私はこの証言をしよう」
黒崎像もまた、そこに来ていた。
来ざるを得なかったのだ。
群衆の方にち、質なコートの襟をてていた。
の鎖は、松のに沈んで鈍くっていた。
医師の言葉を聞いた瞬、黒崎の顔から全ての笑いが消え失せた。
それは、度と戻ることはなかった。
あの痩せた男の姿は、どこにも見当たらなかった。
彼は夜けにへ逃げり、このに度と戻ることはなかったのだ。
黒崎は、言も発さなかった。
が静かに線を巡らせる頃には、崩れていた柵は箇所でしく直されていた。
井戸のは、どこまでも澄んでいる。
尾根からもはっきりと確認できるほどの温かい煙が、毎朝最の煙突からまっすぐ空へと昇るようになっていた。
旅たちは、宿町の馬で最へのを尋ねるようになった。
かつて目をわせようとしなかったあのは、今ではしっかりと旅の目を見据えて、そのを指し示すようになっていた。
は、あるの午、完成した類を持ってやってきた。
それは、の国へと帰ることのできないの旅たちの名を、それぞれの族の元へ正式に届けるためのものだった。