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"19歳で相続した呪われた屋敷" 第5話

とマズルの部だけが、黒く染まっている。

片目はく濁っていた。

しかし、もう片方の目は驚くほど澄んでいて、まっすぐに彼女を見つめていた。

犬は寄ることもせず、かと言って逃げることもなかった。

ただ、かつてこの縁側を見守っていたかのような、静かな線を向けている。

しずは、何も言葉をかけなかった。

彼女は、ゆっくりと井戸へ向かった。

壊れた巻きげに両をかけた。

錆びたワイヤーを引きげると、赤茶けたが半分ほど入った桶ががってきた。

戸棚から取りした最の皿に、そのをし注いだ。

自分と納の、ちょうどの面に置いた。

そして、歩がって待った。

犬は、直した取りで庭を横切った。

急ぐこともなくをみ干すと、皿の傍らにを揃えて伏せた。

片方の濁っていない目は、やはりしずかられなかった。

と匹の静かな暮らしは、そうして始まったのである。

午の、しずは納の扉に取り組み続けた。

湿気で膨らんだ横を、両で持ったで根気く叩いた。

ついに、それをすことができた。

い扉が軋みながらいた。

古くい松脂の匂いが、気に広がった。

に入ると、納はから見た印象よりもはるかに広くじられた。

には、干しを積むためのロフトがある。

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壁沿いにはつの馬が並んでいた。

奥には、古い革の馬具が掛けられた部があった。

埃に覆われた台の荷馬は、輪の組みもしっかりとしていた。

作業台のにった。

そのには、主がほんのしに席をしたかのように、具が然と並べられていた。

槌、斧、錐、鉄のやっとこ、本の鑿。

そして、鉤のついたさなバール。

しずは入りにち、その具の数々をく見つめていた。

彼女は、働き始めた。

納の部で見つけたい箒をにした。

のを掃き清め、ネズミに噛まれた寝具を庭にした。

それを柵の杭にてかけた。

落ちていた枝を細かく割って、黒い鉄のストーブにくべた。

さな炎を操って、鉄鍋で湯を沸かした。

持ってきた茶葉で、茶を点てた。

井戸から汲みげた杯目のは、さっきよりも澄んでいた。

彼女のさなは、で考えるよりも先にいていた。

かつて父親の傍らで壊れた柵を直し、ストーブの煙突を掃除したの記憶が、のひらの覚に残っていた。

槌のみがよい。

古い柄が指先に触れる触が、彼女を現実へと繋ぎ止めていた。

納の荷馬の幌をずらしたのことだ。

その背板に、焼印で刻まれたつの名が見つかった。

最。

そして、そのにあった。

で焼き潰されたように、半分ほど消えかかったもうつの文字。

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しずは、その残された傷痕に親指をわせた。

しかし、完全に読み取ることはできなかった。

馬具のに掛けられた、革表の古い帳簿を見つけた。

ページは湿気で張り付き、茶褐に変している。

彼女は、それをくことはなかった。

作業台のに、そっと置いておいた。

番奥の馬で、古い藁をで蹴散らしたである。

のに、微かな違があった。

しかし、囲炉裏のそばの枚の板。

名の裏に焼き消された言葉。

それらのさな断片は、まるで同じい声を聞こうとする者同士のように、静かに互いを引き寄せっていた。

しずは、松林の向こうに夕が沈むのを見つめた。

自分がこれから何をすべきかを、まだの奥底で測りかねていた。

そのの夜、しずは最の皿に本の蝋燭をてた。

いテーブルのに座り、帳簿をいた。

ページの縁は、湿気ですっかり張り付いていた。

彼女は、指先ではなくナイフの刃を使って、慎に引き剥がした。

最初の数ページは、畜の数や数えの付だった。

その横に、几帳面な文字で記された売買の記録があった。

に購入した種牛のきさ。

の雌牛と引き換えに放した、牛の記録。

祖父の代の、あの特徴な最の文字のループ。

そして、それよりもしく細い線でかれた、父親の若い頃の文字。

ページをめくるうちに、帳簿はただの記録の枠を超え始めた。

それは、別の物語を語り始めたのである。

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