"愛人の妊娠と封印されたカルテ" 第11話
それから、のモラハラと当破綻に対する慰謝料請求の続きを、弁護士を通じてめますので、そのつもりでいてください」
私の声には、切の迷いも、揺らぎもありませんでした。
敏夫は、完全に悟ったようでした。
目のにいる女は、かつて自分の理尽な号に怯え、義母の言に涙を流していた「都のいい妻」ではない。
自分たちがそので壊し、踏みにじり、永に失ってしまった、決しての届かないなのだと。
敏夫はそのに崩れ落ち、アスファルトに突っ伏して、声もなく嗚咽し始めました。
義母はただ、から泡を吹くようにして、さく震えながら私の名を呼び続けていました。
私はにもう度線を向けることすらなく、背を向けました。
オートロックのドアをけ、マンションのエントランスへと入りました。
ガラス扉が閉まり、カチャリと鍵がかかるな音が、の惨めなと私の世界を、完全に分断しました。
エレベーターに乗り、自分の部へと戻りました。
鍵をけ、部のかりをつけると、かなオレンジのが私を迎え入れてくれました。
静かで、清潔で、誰の悪もしない、私の。
私は買ってきた野菜を蔵庫に仕い、コートを脱ぎました。
洗面台の鏡に映る自分の顔を見つめました。
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歳。目尻には皺があり、髪にもいものが混じっています。
けれど、その瞳は、ので今が番、く、澄み渡っていました。
コンロにさな鍋をかけ、昆布で引いた汁を温めました。
菜と根、豆腐を入れ、が通るのを静かに待ちます。
湯気がふわりとちり、部のに優しいりが広がっていきました。
ベランダにて、夜空を見げました。
の澄んだ夜空には、無数のがたく、けれど力く瞬いていました。
あの敷にいた頃は、夜空を見げる余裕すらありませんでした。の朝の準備、義母の薬の管理、敏夫の嫌……そんなものに追われ、自分が息をしていることすら忘れていました。
失われたは、もう度と戻ってはきません。
けれど、私はそのを悔していませんでした。
あの苦しみと忍耐の々があったからこそ、今、自分のでち、自分の呼吸できているこの瞬の尊さが、骨の髄まで理解できるのです。
鍋から、ことこととよい音が聞こえてきました。
「……いただきます」
分の卓に鍋を運び、私はさくをわせました。
い汁をに含むと、体の芯まで温かさが染み渡っていきました。
私のは、まだ始まったばかりです。
誰かのための犠牲ではなく、私自のための、しく、誇りいが。