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"愛人の妊娠と封印されたカルテ" 第9話

弁護士を通じて莉奈を探しそうとしましたが、彼女には資産など残っておらず、以の男の借の返済にすべて消えていたため、を取り戻すことは絶望でした。

それどころか、莉奈が周囲に「あのの息子は無精子症のくせに威張り散らし、妻を当に追いした変態だ」と言いふらしたため、その噂は敏夫の勤務先にもれ渡ることとなりました。

会社での敏夫のは完全に失墜しました。

若い妻を貰って子供ができたと吹聴していた男が、実は騙されての子供を押し付けられそうになっていただけだった。しかも妻に対するのモラハラと当な婚の経緯が筒抜けになり、コンプライアンスをする会社において、敏夫は閑職へと追いやられました。

料は幅に減額され、世のは完全に閉ざされました。

庭内では、脳梗塞の気配を見せて寝たきり寸となった義母が、毎ベッドのから敏夫を呪うように罵り続けました。

「おが役たずだったせいで! 私のを返しておくれ! 恵子さんを連れ戻しなさい! く恵子さんに謝って、連れ戻してきなさいよ!」

かつて恵子を虐げていた張本が、今では恵子のによって崩壊した事と介護の現実に耐えかね、恵子の名を叫びながら泣き喚く毎。

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掃除のき届かない敷には埃が積もり、台所には腐ったゴミのが放置され、かつての威厳ある名の面はどこにもありませんでした。

敏夫は、き獄ので、ただつの希望に縋り付くようになっていきました。

恵子だ。

恵子なら、も尽くしてくれたあの優しい恵子なら、自分がから座して謝れば、きっと許してくれるはずだ。

あいつには実もない。寄りもない。で寂しく暮らしているに違いない。

「すまなかった、俺が悪かった。もう度やり直そう」と言えば、泣いてんでこのに戻ってきてくれるはずだ。

勝で、醜悪な妄。

しかしその妄だけが、崩壊寸の敏夫の精神を辛うじて支えていたのです。

敏夫は興信所にを払い、私のしいアパートの所を突き止めました。

のが肌を刺す、あるの夕暮れのことでした。

私は会計事務所での仕事を終え、所のスーパーで買った根や菜の入った買い物袋を提げて、アパートへのを歩いていました。

今夜は温かい鍋にしよう。そういながら、マフラーに顔を埋めて歩いていた私の界に、アパートのエントランスの灯のに佇む、つのがび込んできました。

は、無様に伸びた髪交じりの髪に、ヨレヨレのコートを着た敏夫。

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そしてもうは、粗末な子に座り、毛布にくるまってさく震えている義母の絹でした。

ヶまでの傲な面は、から完全に消え失せていました。まるで歳も歳も気に歳をとったかのように、浅黒くやつれ果て、気を失った瞳で私を見つめていました。

「……恵子!」

敏夫が私の姿を認めるなり、弾かれたように駆け寄ってきました。

私はち止まり、無表のまま彼を見据えました。

「恵子……! 探したんだぞ! こんなところにいたのか!」

敏夫は私の首を掴もうとを伸ばしてきましたが、私は歩ろにがり、そのをややかに躱しました。

敏夫のが空を切り、彼はけなくよろめきました。

「何かご用ですか、さん」

私ののような呼びかけに、敏夫の顔が歪みました。

「た、さんだなんて臭いことを言うなよ! 敏夫だよ、おの夫の敏夫だ!」

「私の戸籍の夫はもういません。私たちはヶに正式に婚しました。もう赤ののはずですが」

「恵子さん……! 恵子さん、許しておくれ……!」

子のから、義母が泣き叫ぶような声をげました。

麻痺の残るで子の輪を必に漕ぎ、私の元へと擦り寄ってきます。かつて私を見し、散々いたぶり尽くしたあの義母が、今や涙とで顔をぐしゃぐしゃにして、私のコートの裾に縋り付いてきたのです。

「悪かったよ……私が全部悪かった! おが子供を産めないなんて責めて、本当にすまなかった! 敏夫が無精子症だったんだよ! あの子が……あの子が欠陥品だったんだ! おは何つ悪くなかったんだよ!」

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