"愛人の妊娠と封印されたカルテ" 第7話
「ひっ……! ち、違うの! 敏夫さん、聞いて!」
「何が違うんだよ! ヶってどういうことだ! 俺と会うから妊娠してただろうが! 誰の子供だ! 俺の子じゃなかったのかよ!?」
敏夫の号が診察に霊しました。
莉奈は追い詰められ、ついにその化けの皮を脱ぎ捨てました。き直ったように涙を拭い、敏夫を睨み返したのです。
「うるさいわね! 誰の子だっていいじゃない! あんたが『俺の子供を産んでくれたらもも全部やる』って偉そうに豪語したから、ちょうどいいとって乗っかってあげたんじゃない! の彼氏と別れてもなくて困ってたのよ! あんたみたいな持ってる都のいいおっさんが釣れたから、父親の代わりにしようとしただけよ!」
「なっ……なんだと……!?」
敏夫の目のが真っ暗になりました。
自分をし、自分の子供を宿したと信じ込んでいた若い女。
連れ添った妻を捨ててまでに入れようとした「しい族」。
その正体は、別の男の子供を籠り、目当てで自分を騙した詐欺女だった。
「だ、騙したな……! ふざけるな! もバッグも返せ! 今すぐ警察に突きしてやる!」
敏夫が莉奈の腕を掴もうと掴みかかったそのでした。
「さん。院内で騒ぐのはやめていただきましょう」
松永医師の、氷のように徹な声が響きました。
医師は騒ぎてるを軽蔑の差しで見つめながら、元のパソコンの画面をスクロールしていました。
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そして、カルテの過履歴のある点に目を留めると、呆れたようにさくため息を吐いたのです。
「……敏夫さん。あなた、以うちの病院の泌尿器科を受診されたことがありますね」
敏夫のきが、ピタリと止まりました。
まるで臓をたいで直接握り潰されたかのように、彼の顔から血の気が引いていきました。
「え……?」
松永医師は、カルテに記録された過のデータを無質に読みげ始めました。
「、当院の殖医療センターおよび泌尿器科において、詳細な精液検査および精巣検を受けられています。……診断結果は『非閉塞性無精子症』。精管の閉塞ではなく、精巣組織そのものの造精能全。原因は代半に罹患した流性腺炎(おたふく邪)による両側性精巣炎の遺症。……記録にはっきりと残っていますよ」
医師は静かに顔をげ、敏夫の目をまっすぐに見据えました。その差しには、れみすらありませんでした。
「あなたの体内では、精子は匹たりとも作られていません。自然妊娠の能性は、医学に見て『完全なゼロ』です。たとえ奥さんが妊娠ヶであろうと、週であろうと……最初から、あなたにお子さんができるはずなどなかったのですよ」
診察の空気が、完全に凍りつきました。
護師たちも、すべてを察したように淡な線を敏夫に突き刺しています。
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「あ……あ、あ……」
敏夫のから、空気の抜けるようなけない声が漏れしました。
全から嫌な汗が吹きし、膝がガクガクと震え始めました。
忘れていたわけではありませんでした。
、この病院でされたあの残酷な宣告を、敏夫は自分の記憶の最部に封印し、見ないふりをし続けていただけだったのです。
「何かの違いだ」「現代の医学なんて当てにならない」「俺が子供を作れないはずがない」。
そうやって自分を欺き、その嘘を守るために妻の恵子にすべての罪を擦り付け、「女」と罵り、母の虐待を放置してきた。
そして、若い莉奈が「妊娠した」と甘い声で囁いた、敏夫の歪んだプライドは歓に狂い、過の診断を「奇跡によって覆された過の誤診」だと都よく信じ込んでしまったのです。
奇跡など、どこにも起きていませんでした。
ただ、自分が子供を作れない欠陥を抱えた男であるという残酷な真実と、その愚かさに付け込まれて見らぬ男の子供の父親にされかけていたという無残な現実だけが、のに晒されたのです。
「うわああああっ!」
敏夫はを抱え、獣のような叫び声をげながら診察をびしました。
待の々が驚いて振り返る、敏夫は転がるようにして病院のへと逃げしました。