"愛人の妊娠と封印されたカルテ" 第5話
と言い放ち、部に閉じこもってしまうのだそうです。
事も、敏夫や義母の分など作らず、や級な総菜を敏夫のカードで勝に注文してで平らげる。
「お義母さん、すっかりやつれちゃってね。今まで恵子が全部でやってくれてた事や介護の穴が、全部自分に返ってきたのよ。このゴミしのに見かけたけど、腰を押さえながら『こんなはずじゃなかった』ってブツブツ文句を言ってたわ。敏夫さんも敏夫さんよ。会社で『を過ぎて若い嫁をもらい、子供までできた』って自しまくってるらしいけど、裏では莉奈さんから『子供のための養育費を先に座に入れて』『もっと広いマンションに引っ越したい』って請られて、策にり回ってるって」
私は静かに茶を啜りながら、その景を像しました。
敏夫も義母も、莉奈という劇薬の甘い罠にまんまと嵌まっているようでした。
「子供ができる」という点の事実だけで、すべてを許し、崇め奉っていたのでしょう。
「でもね、恵子」
聡子はし声を潜め、探るような目で私を見つめました。
「莉奈さんのお腹、もう妊娠ヶとかヶのはずでしょ? なのに、所で見かけても全然お腹が目たないのよね。それに、このドラッグストアで、ものすごいいヒールを履いてタバコを買ってるところを見たってがいてさ……本当に妊娠してるのかしらね?」
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「さあ……どうでしょうね」
私はそれ以、何も言いませんでした。
ただ、計の針が確実に、破滅の刻限へと向かってんでいる音を聞いたような気がしました。
そして、運命のが訪れました。
それは、私が婚届に判を押してから、ちょうどヶが経ったの初めのことでした。
敏夫は、頂の極みにいました。
そのは、莉奈を連れて、内でも評判のい総病院の産婦科へ「妊婦健診」に付き添うだったからです。
これまで莉奈は、「つわりが酷いから」「個のさいクリニックで診てもらってるから丈夫」と言い訳をね、敏夫が健診に同するのを頑なに拒んでいました。
しかし、いよいよ母子帳を交付してもらい、超音波でくが子の姿をこの目で確認したいと、敏夫がく主張したのです。義母からも「うちの事な跡継ぎなんだから、設備のったきな総病院でしっかり診てもらいなさい」と急かされ、莉奈は渋々、この病院の予約を取りました。
病院の待は、若い夫婦やきなお腹を抱えた妊婦たちで混みっていました。
そので、敏夫はわざとらしく背筋を伸ばし、周囲を見渡していました。
周りの夫たちは代や代ばかりです。そのにあって、を過ぎた自分が、隣に代の美しい若い妻を侍らせている。
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その事実が、敏夫の肥化した自尊をこれ以ないほど満たしていました。
(見たか。俺はまだ男として現役なんだ。子供の産めないあの干からびた恵子を捨てて、正解だった。俺の血を引いた元気な男の子がまれれば、うちの系は泰だ。母さんもぶし、親戚どもにもを振って自できる)
敏夫は、隣で落ち着きなくスマートフォンの画面をスクロールし続けている莉奈の肩を抱き寄せました。
「おい、莉奈。緊張してるのか? 丈夫だ、俺がついているからな」
「……あ、うん。そうだね、敏夫さん」
莉奈の声はどこかの空で、その横顔には隠しきれない焦燥と青さが浮かんでいました。額にはっすらとや汗さえ滲んでいます。敏夫はそれを、初めてのきな病院での健診による緊張だろうと、勝に好に解釈していました。
やがて、スピーカーから無質なアナウンスが流れました。
『受診番号〇番、莉奈さん。第診察へお入りください』
「よし、こうか、莉奈」
敏夫はちがり、莉奈のを引いて診察のドアをけました。
診察のにいたのは、髪交じりの落ち着いた貌をしたベテランの産婦科医、松永医師でした。
デスクのにはカルテが表示されたパソコンのモニターがあり、医師は鏡のブリッジを指先で押しげながら、入ってきたを瞥しました。