"「母の十分は無駄」と笑った夫の失脚" 第6話
あの会議で、さんの娘さんが流した血の涙を、このたちは見ていない。 腿骨を折って今も入院している老の痛みを、ミリも像していない。
あるのは、ただ自分たちの体裁と、に入り損ねた肩への執着だけ。
「……恩って、何の恩ですか」
私のから、く乾いた声がこぼれた。
「は?」
義母が眉をねげる。
「健さんは、母やあそこにいるお寄りたちからおを巻きげたんです。嘘をついて、全を売り物にして、百万円く売りげた。それが表彰されるはずだった実績の正体ですよ」
「の利き方に気をつけろ、由美!」
健が詰め寄ってきた。 握りしめた拳が、私の顔の横の壁をドンと殴りつける。 埃がパラパラと落ちた。
「営業なんてな、かれなかれ話を盛るのが当たりなんだよ! どの業界だってやってることだ! それを内がろから刺すような真似しやがって……おい、今すぐあの老ホームへけ」
「……って、どうするの」
「あのババアに、会社への告発を取りげさせるんだよ! 『認症の気がある母親が、娘夫婦への当てつけで勝に類を集めて騒ぎてました』って、会社にかせろ! 族のトラブルってことにすれば、コンプライアンスもこれ以くは突っ込めない!」
本気で言っているのだ。 この男の顔には、罪悪のかけらもない。
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自分の嘘を糊塗するために、今度は私の母に「認症」のを塗れと命じている。
「おがをげて、分の類を回収してこい」
健はポケットから財布を取りし、乱暴にテーブルに叩きつけた。
「なら、俺のポケットマネーからしずつ返してやる。械の代全額と、迷惑料としてあたり万円包めば、あの貧乏どもだって文句は言わねえだろ。それで打ちにさせろ。いいな?」
胃の底から、たい吐き気がせりがってきた。
反省ではない。 事態を理解したからでもない。 ただ、自分の位を守るために、裏でを掴ませて蓋をしようとしているだけだ。
「……断ります」
「あ?」
「母は騙されたから、正規の続きで会社に抗議したの。母にも、の入居者の方にも、それを訴える権利があるわ」
「お、自分が誰の妻か忘れたのか!?」
健の唾が、私の頬にんだ。
「俺がクビになったらどうなるか分かってんのか! ローンはどうする! 世体はどうなる! おの母親のわがままのせいで、このが破滅するんだぞ!」
「破滅させたのは、お母さんじゃない」
私は震えるでしっかりとを踏み締め、夫の目をまっすぐに見返した。
「嘘をついたのは、あなたよ。私はあなたの妻だけど、あなたのついた嘘を本当のことにしてあげる義理はないわ」
健の喉が、ヒッとさく鳴った。
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の結婚活で、私がここまで確に言い返したことなど度もなかったからだ。
「な、なんだと……?」
「話はそれだけ? 私、かけてきます」
「待ちなさいよ、由美さん!」
背で義母が切り声をあげ、健が何かを蹴りばすい音が響いた。 私は度も振り返らず、玄関のドアをけての空気を吸い込んだ。
ぬるいが、照った頬を撫でていく。 の震えは止まらなかった。 けれど、ののは、驚くほどれ渡っていた。
翌の午、私は母に付き添われ、芳さんが入院している民病院の病を訪れていた。
ベッドので横たわる芳さんのには、痛々しい牽引器具がつけられていた。 かつて壇の入れをしながら穏やかに微笑んでいた面は消え、青い顔にはい皺が刻まれている。
病ののベンチで、娘の恵子さんが私と母にコップのお茶を差ししてくれた。
「わざわざすみません、由美さん。あなたを責めるつもりは、本当にないのよ」
「……いいえ。夫が取り返しのつかないことをしました。本当に、申し訳ありません」
私がくをげると、恵子さんは力なく首を横に振った。
「械が壊れていたとか、波が届かなかったとか、そういうことなら私もここまでりはしなかった。械に完璧なんてないことくらい、分かっていますから」
恵子さんはバッグのから、枚の折りたたまれたを取りした。 裏がい、再のメモ用。 そこにっていたのは、見覚えのある夫の汚いりきだった。