"朝四時の弁当を捨てた夫が、五分後にすがりつく理由" 第4話
「満か、美代子。おのせいで、恥をかかされたぞ」
ろから入ってきた拓也も、疲れ果てた顔で壁に寄りかかり、私を睨みつけている。 織さんだけが、しれた廊の隅で、類鞄を抱えたままち尽くしていた。
私はリビングの子に座ったまま、編み物をしていたを止めなかった。
「恥って、何のことかしら」
「とぼけるな!」 正彦がテーブルを拳で叩いた。 ティーカップがカタカタと音をてる。
「藤原の女め……! べた瞬に箸を置きやがった! 『先週お話しした、めても柔らかい庭の夫とは程いですね』だと! 『肉はパサつき、タレは分して油が浮いている。これで交代勤務の従業員の健康を預かれるとおいですか』ってな!」
正彦の顔が屈辱で真っ赤に染まる。 号を撒き散らしながら、自分の非を誤魔化そうと必だった。
「森田の野郎も使えねえ! プロの料理のくせに、庭料理の真似事ひとつ満に再現できねえでやんの! おが朝、余計な真似をしてあの弁当を捨てさせさえしなければ、すんなり決まっていた商談なんだよ!」
「捨てたのは、あなたよ」
私がややかに指摘すると、正彦は喉を詰まらせ、さらに甲い声で喚いた。
「俺はあれがサンプルだとらなかったんだ! 普通の妻弁当だとったから捨てたんだろうが! 紛らわしい所に置いとくおが全部悪い!」
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「そうだよ、母さん」 拓也が父親に同調してを挟む。 「事な仕事のサンプルなら、そうと分かるように付箋を貼るとか、渡しで説するとか、やり方があっただろ! 会社が傾いたらどうするんだよ!」
を過ぎた息子が、父親の理尽なつ当たりに何の疑問も持たず、ただ母親を責めてる。 この子は、いつからこんなに育ってしまったのだろう。 私の背筋を、たいが吹き抜けていく。
私は編み棒を置き、テーブルのに伏せてあったスマートフォンをに取った。 画面をタップし、枚の写真をの目のに差しす。
画面には、今朝分に撮された写真が映しされていた。
キッチンのカウンターのに置かれた、黒い段の弁当箱。 その蓋の央には、鮮やかな黄のマスキングテープが貼られ、私の几帳面な字で、黒い油性ペンでこうかれていた。
【黒ロジスティクス様向け 試作最終A案(塩麹鶏)】 【林正彦様 10:00試会用 ※加・保テスト済み】
正彦の目が、限界まで見かれた。 声が喉に張り付き、引きつった呼吸だけが漏れる。
「……な」
「見えなかった、とは言わせないわよ」
私はスマートフォンの画面を指先でトントンと叩いた。
「黄いテープに、太いマジックでこれだけきくいてあったのよ。あなたはそれを見もしないで、ただ私が作ったというだけで『貧乏くさい』と決めつけ、ゴミ箱に叩き落としたの」
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拓也が写真と父親の顔を交互に見比べ、気まずそうにを噤んだ。 「で、でも……声にして言わなきゃ分かんないだろ……」 消え入りそうな声で言い訳をにする息子に、廊にっていた織さんが、すっとややかな線を向けたのを私は見逃さなかった。
正彦は拳を握りしめ、ワナワナと肩を震わせている。 自分の完全な過失を突きつけられ、逃げを失った男の、浅ましいプライド。
「……藤原は、何て言ったの?」
私が尋ねると、正彦は苦々しそうに顔を背けた。
答えられない父親に代わって、織さんが静かにをいた。
「……週の猶予をいただきました。週に、再度の試会をいます。そこでメインの付けの改善、量調理ラインでの再現性データ、そして百円に収めるための詳細な原価計算を再提すること。それができなければ、コンペから完全に除すると……そう仰っていました」
織さんの声は静で、客観だった。 彼女だけが、この状況の致命なさを正確に理解しているようだった。
「聞いたか、美代子!」 正彦がここぞとばかりに息を吹き返し、威圧な態度で私を指差した。
「首の皮枚、繋がったんだよ! いいか、週だ。週で、全部作り直せ。あの写真にあった塩麹の鶏肉のレシピと、原価の計算表を全部にいて会社にせ。