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"挙式前夜に「家を寄越せ」と迫る娘と、席を捨てた母" 第11話

夫の腕を掴む私の両は、激しくガタガタと震えていた。 止まらない。 夫へのりではない。 この、夫の優しさに甘え、夫の沈黙のに胡をかいてきた、自分自への激しい嫌悪だった。

「ごめんなさい……ごめんなさい健司さん……!」 私は崩れ落ちるように畳に膝をつき、夫のを握りしめて泣きじゃくった。 「私が悪いのよ。全部、私のさのせい……!」

私はずっと、怯えていたのだ。 夫をくし、学だった娘のを引いて再婚したあのから。 「お母さんは自分を捨ててしい男を選んだ」と娘にわれるのが怖くて、私は庭ので、常に娘の顔ばかりを窺ってきた。

娘が夫を無しても、たしなめることすらしなかった。 夫がボーナスを削っての壁を塗り替えてくれても、娘のでは「お父さんの保険で直した」と嘘をついた。 夫のを透にすることで、私は「母親としての罪悪」から逃げ続けていただけだったのだ。

私が夫を尊しなかったからこそ、娘は夫を「ただの居候」と見し、あんな無残な切れを突きつける怪物に育ってしまった。

「健司さん……私ね、もう母親をやめる」

涙を拭い、顔をげた。 私の目は、真っ赤に腫れがりながらも、まれて初めて揺るぎないを宿していた。

「あなたがでてくなら、私もこのをる。

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荷物を全部捨てて、あなたのアパートに転がり込んでやるわ」

夫は呆然と私を見つめていた。

「このはね、あなたと私が、汗垂らして守ってきた所よ。んだ夫の霊や、親を脅すような娘のために、あなたの尊厳を差しすことなんて絶対にしない。……絶対に、許さない」

夫のきなが、私の震える肩にそっと触れた。 その指先が、微かに震えているのが分かった。

「……弓子さん」

「荷物を片付けて」 私はをすすり、夫のシャツを拾いげて胸元に押し返した。 「戦うなら、で戦うの。私をにしないで」

夫はしばらく私の顔をじっと見つめていたが、やがて、く、静かに息を吐いた。 その目尻に、うっすらと涙が滲んでいた。

「……分かったよ。片付けるよ」

スーツケースのファスナーが、い音をてて閉じられた。

翌の午。

れの空とは裏腹に、宅の角にあるがの空気は、鉛のようにく淀んでいた。

ピンポーン、ピンポーン! ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン!

激しいチャイムの連打。 インターホンの受話器を取る暇すら与えず、今度は玄関の引き戸がドンドンと乱暴に叩かれた。

「弓子さん! いるんでしょ! けなさいよ!」

切り声。 昨の娘の声ではない。もっと太く、野太い、聞き覚えのある女性の声だった。

私は台所の布巾を置き、く息を吸い込んだ。

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隣の居で本を読んでいた夫がちがろうとするのを、私はで制した。

「丈夫。座っていて」

玄関へ向かい、鍵をして引き戸を引いた。

晩のたいと共にび込んできたのは、の女の姿だった。 は、昨の今で目のに隈を作り、憎悪に満ちた目で私を睨みつける娘・真央。 そしてもう――の派なカーディガンを羽織り、仁王ちで眉を釣りげているのは、くなった夫の妹、真央の叔母にあたる雅代だった。

「まあ! やっと顔をしたわね!」 雅代は挨拶もそこそこに、のまま玄関のたたきに踏み込んできそうな勢いで喚き散らした。 「弓子さん、あんた体どういう神経してるの!? 実の娘の結婚式をすっぽかしたに、赤のと結託して真央ちゃんを脅したんですって!?」

通りの向かいのから、レースのカーテンがサッとくのが見えた。 雅代はわざと、所に聞こえるような声をしているのだ。 世体を気にする私の性格をり尽くしたでの、古典な嫌がらせだった。

「お母さん、雅代叔母さんにも全部話したから」 娘が雅代のろから、勝ち誇ったように顎を突きしてきた。 「お父さんの血を引く親族が、あんたたちの悪事を黙って見てるわけないでしょ。恥をりなさいよ!」

「そうよ!」 雅代が唾をばしながら、私の先に指を突きつける。

「孝雄兄さんが命を削って遺したこのを、どこの馬の骨ともれない男に乗っ取らせるなんて、佐藤の恥晒しもいいところだわ! 兄さんが葉ので泣いてるわよ! あんた、妻の分際で調子に乗るんじゃないわよ!」

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