"挙式前夜に「家を寄越せ」と迫る娘と、席を捨てた母" 第7話
輔さんのご両親に見栄を張り、「杉並の軒を居にする」と約束してしまった、もう戻りができないのだろう。 自分のついた嘘の帳尻をわせるために、実の母親からを毟り取ろうと必だった。
胸の奥が、氷を流し込まれたようにえ切っていく。 この子は本当に、私の暮らしなどどうでもいいのだ。 私がからどこで寝起きし、何をべてきるのかなど、ミリも配していない。
「真央」 私はまれて初めて、を完全に押し殺した声で娘の名を呼んだ。 「私があなたに現を支払って、このを買い取る筋いはありません」
「はあ!? あんた、母親のくせに娘のを祝う気すらないわけ!?」
「弓子様のおっしゃる通りです」 さんが私の言葉を静かに引き取った。 そして、ブリーフケースからさらに分い、茶い挟みを取りした。 そのみは、話帳ほどもあった。
ドサリ、とい音をててそれが駄箱に置かれる。
「真央様。あなたがどうしても法定相続分に基づき、遺産分割を銭で解決したいとお望みなら――まずは、こちらの清算を先してっていただく必があります」
娘が怪訝そうに眉を寄せた。 「……何よ、その類」
「過における、本物件の『管理及び維持保全にかかる求償債務の細』です」
さんは表をめくり、几帳面に理された領収のコピーの束を広げた。
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そこには、ハウスメーカーやリフォーム業者、税務署の受領印が並んでいた。
「平成、壁および根の防修繕事。百万円」 「平成、アリ被害による台補修および防腐処理。百万円」 「平成、震災による根瓦の滑落補修と漆喰補。百万円」 「令、湯器破裂に伴う配管総交換および浴換気乾燥設備の改修。万円」 「そして、過にわたる固定資産税および都計画税の納付総額。平均万円、計百万円」
さんの淡々とした読みげが続くにつれ、玄関先の空気が段とく沈んでいく。
「計額は、百万円です」
さんは鏡のブリッジを押しげ、娘の顔をたく見据えた。
「民法第百条に基づき、共物の維持・管理にかかる費用は、各共者がその持分に応じて負担しなければなりません。真央様の持分は分の。つまり、真央様には現、約百万円の管理費用支払い義務が潜に発しております」
「は……? よ、百……何それ……」 娘の唇が刻みに震え始めた。
「さらに申しげましょう」 さんは、領収の束に添付された、の振込受取を枚ずつめくってみせた。 そこには、確な名義が印字されていた。
『振込依頼:佐藤健司』
「これらの維持保全費用、ならびに固定資産税の全額は、真央様でもなく、弓子様の貯でもなく、すべて同居である健司様の個与座から、にわたり度の滞りもなく支払われてまいりました」
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その瞬、娘の呼吸が止まった。
「もし真央様がこのを単独で取得したい、あるいは銭分割を求するというのであれば、健司様は真央様に対し、民法の当利得返還請求および事務管理に基づく求償権を使し、過の負担分百万円の括支払いを即座に求めることになります」
玄関が、を打ったように静まり返った。
カチ、コチ、と廊の古計の秒針の音だけが、やけにきく響く。 娘の横顔は、気を通り越して真っに染まっていた。
「う……嘘よ……」 娘は首を激しく横に振った。 「そんなの、あのおじさんが勝にやったことでしょ!? 私は頼んでない! お父さんのにが勝にをしただけじゃない!!」
「勝、ですか」 それまで私の背で黙って控えていた健司さんが、静かに歩へた。
鳴るでもなく、威圧するでもない。 ただ、誠実にきてきただけが持つ、みのある静かな声だった。
「真央ちゃん。君が学を卒業する、の寒波で湯器が壊れて、のが止まったのを覚えているかい?」
娘の喉が、引きつるようにいた。
「あの、君は就職活で忙しいからと、毎朝温かいシャワーがないことに酷く腹をてていたね。