みかん小説
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"三人だけの家族写真と、消された私" 第1話

写真館の受付カウンターに置かれた枚の予約伝票を、私は指先でそっと押さえた。

備考欄の「アルバム掲載名」という項目に、ボールペンで几帳面にき殴られた見慣れた跡が、蛍灯のいのでくっきりと浮かびがっている。

『母親の名は載せないでください』

産の貧血でかすむ界のなか、その文字だけが異様な輪郭を持って網膜に焼きついた。

娘の結がヶを迎え、今はお宮参りの記撮だった。 スタジオの奥からは、まだスタッフたちの材を片付ける気配や、義母の弾んだ笑い声が微かに漏れ聞こえている。 「産で顔が悪いから、あなたは休んでて」と言われ、促されるまま待スペースのソファに座らされていた私の目ので繰り広げられたのは、義母が結を抱き、その隣に夫の拓也が寄り添う「族写真」の撮だった。 違にが竦み、逃げるようにスタジオをようとした私の背に、カメラマンの野さんが声をかけてくれたのだ。

「失礼ですが、お子さんのお母様ですよね?」

そう尋ねられ、私がさく頷いたあとに差しされたのが、この伝票だった。

「野さん……これは、義母がいたものですか」 「はい。お話でご予約をいただいた、事の打ちわせでご来された際に、お義母様ご自が記入されたものです」

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野さんは困惑と、わずかな警戒を滲ませた目で私を見ていた。 町のさな写真館をで切り盛りしているという彼は、実直そうなの男性だ。

「最初はお母様のご体調がわしくなくて撮に参加されないのか、あるいはご庭の事でそういった形を望まれているのかとっておりました。ですが……先ほどの撮のご様子を拝見していて、どうにも腑に落ちない点がく、確認させていただいた次第です」

野さんの丁寧な言葉遣いが、かえって事態の異常さを浮き彫りにしていた。 私はく息を吸い込み、え切った指先をぎゅっと握りしめた。

「教えてくださって、ありがとうございます。し、確認してきます」

私は伝票から線をげ、待スペースへと向かった。 ソファには、拓也が持ち無汰そうにスマートフォンを眺めながら座っていた。そのしれた所では、義母の子が鏡ので嫌に髪をえている。

私はまず、拓也の正面にった。 私の気配に気づいた夫が、のんびりとした表で顔をげる。

「ん? 彩、もう終わったよ。母さん、すごく満そうだったな。結も途でぐずらなくてよかった」 「拓也。このアルバムのこと、あなたどこまでってるの?」

私の声のさに、拓也はわずかに眉を寄せた。

「どこまでって……母さんが親戚に見せるための記アルバムを作りたいからって、費用も全部してくれるって言ったやつだろ? お、さっきからどうしたんだよ。

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顔、本当に悪いぞ」 「アルバムに載せる名のことよ。私の名を載せないように指定されていたこと、ってた?」

拓也はぽかんとをけた。その瞳には、嘘をついているような揺というよりは、純粋な理解の追いつかなさが見えた。

「は? 何それ……載せないって、どういうこと? 彩の名を?」 「写真館の予約伝票に、そういてあったの。『母親の名は載せないでください』って」 「えっ……いや、そんなはずないだろ。母さんがそんなことくわけ……」

拓也の言葉が途切れた。私の線の先を追って、彼もまた義母のほうを振り返る。 義母はすでにこちらのただならぬ空気に気づいたのか、鏡をバッグにしまい、りで寄ってきた。その顔には、隠しきれない苛ちと、どこかき直ったようなが混ざりっていた。

「ちょっと、彩さん。拓也に何をごちゃごちゃ言ってるの? せっかくのお祝いのに、そんな暗い顔をして」

義母は歳。くに夫をくし、女つで拓也を育てげただ。普段からなりに気を遣い、親戚付きいや所の評判を誰よりも気にする。

私は努めて平坦な声で、義母に向き直った。

「お義母さん、受付の予約伝票を見せていただきました。アルバムの掲載名に『母親の名は載せないで』とかれていたのですが、どういう図でしょうか」

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