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"三十周年に施設へ捨てられた妻と予約主の息子" 第15話

今度は、織さんが弾かれたように顔をげた。 その目には、信じられないものを見るような絶望と、激しいりが宿っていた。

「千、百万……? 隆志さん、そんな話……言も……」

「算をしなさいよ!」

私の徹な声が、凍りついた空を切り裂いた。

「息子への、千百万。 しい女への、千百万。 計、千百万円!」

卓の数字を、夫の目のに突きつける。

「を売ってに入るおは、全部で千百万。 あなたたちが分けしようとしていたは、千百万。 初めから、百万りないのよ! しかも、私が円も財産分与を求めず、黙って老ホームに消えるという、あり得ない提のでね!」

「な……っ!」

亮太がちがった。 子の脚がを擦り、鈍い音が響く。 息子の目は血り、父親を睨みつけていた。

「親父……! どういうことだよ!? 俺に千百万くれるって言っただろ! あの女のマンションに千百万す約束してたのかよ!? じゃあ、俺のは最初からどこにもなかったのかよ!」

「うるさい! 黙れ!」 夫が逆してちがり、叫んだ。 「おたち若い奴らは、自分たちの力でローンを組めばいいだろうが! 俺はもうすぐ定なんだ! これから第のを始める俺のを、なんでおに全額くれてやらなきゃいけないんだ!」

「ふざけんな!」 亮太がテーブルに両を叩きつけた。 「母さんを追いせばをすって言ったのは親父だろ! 俺があの施設に話して、母さんを騙して連れてく段取りまで組んだんだぞ! 俺のを汚させておいて、自分だけあの女としいマンションで暮らすつもりだったのかよ!」

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「亮太、お、何を言ってるの……?」

ソファからちがった織さんの声は、震えていた。 その目は、夫と息子を、まるで汚物を見るかのようにたく見つめていた。

「施設って何……? 奥様が自分から希望して別居したんじゃないの……? あなたたち、で結託して、このを騙して追いしたの……?」

「織、違うんだ! 聞いてくれ、織!」 夫がけない声をあげて織に駆け寄ろうとする。 だが、織は嫌悪をわにして、歩ろへび退いた。

「触らないで!」

織さんの鋭い叫び声が響いた。

「嘘つき……! おのことも、奥様のことも、全部嘘じゃない! 千百万せるなんて、最初から円も持ってなかったんじゃない! 私を詐欺の片棒に巻き込む気だったの!?」

「織! 俺はおをしてるんだ! あいつが……真紀がゴネなければ、全部うまくいくはずだったんだ!」

夫が狂ったように私の名を叫んだ。 首筋に青筋をて、唾をばしながら私を指さす。

「全部おのせいだ! おが素直にサインして施設にきさえすれば、丸く収まったんだ! 、俺の言う通りに従ってきたくせに、なんで今さら邪魔をするんだ! 族のために、なんで協力できないんだよ!」

れだった。 連れ添った夫の、あまりにも底の浅い、醜怪な本性。

私はゆっくりとちがった。 背筋を伸ばし、夫の目をまっすぐに見据えた。

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「何を協力しろと言うの?」

私の声は、静かだった。 けれど、部のすべての号を圧するみを持っていた。

「夫がしい女と暮らすマンションのために、私の老資を差しすこと? それとも、息子の見栄のために、私が守ってきた帰るをけ渡すこと? ……あなたたちの言う『族の幸せ』のに、私の居所は最初からなかったじゃない」

夫が息を詰まらせた。 亮太が、を見つめたまま、がたがたと震えした。

「誰ので、誰の犠牲のにって、しい活を始めるつもりだったの? 、私はあなたたちに尽くしてきた。 でも、自分のをあなたたちの欲望のためにドブに捨てる筋いは、ミリもないわ」

織さんが、震えるで自分のバッグを抱え直した。

「……帰ります」

「織! 待ってくれ!」 夫がすがりつこうとしたが、織さんはその腕を乱暴に振り払った。

「もう度と連絡してこないで。……最よ、あなたたち親子」

ヒールの音を荒々しく響かせ、織さんは玄関へとりっていった。 バタン、と玄関のドアが閉まるい音が、リビングに響き渡った。

取り残された夫は、膝から崩れ落ちるように子に座り込んだ。 額を押さえ、荒い息を吐いている。

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