"三十周年に施設へ捨てられた妻と予約主の息子" 第5話
『……母さん? 今どこにいるの?』
息子の声は、苛ちと焦りが混ざりっていた。
「ビジネスホテルよ。駅の」
『はあ!? 何やってんだよ! 父さんから聞いたぞ、織さんに鳴り散らしてをてったって! いい歳して恥ずかしくないのかよ!』
喉の奥で、何かがぷつりと切れる音がした。
「亮太。あなたは、お母さんが歳で、スーパーの鮮魚コーナーで毎働いていることをっているわよね」
『……ってるよ。それが何だよ』
「元気で働いている母親を、どうして齢者施設に送り込もうとしたの?」
話の向こうが瞬、沈黙した。 だが、返ってきたのは反省でも弁解でもなかった。
『……だって、父さんがそう言ったんだよ。母さんはもう昔から、のことだけで杯で、世のことも分かってないし、でアパート借りて暮らす甲斐性もないだろって。施設なら事もるし、掃除もしてくれる。母さんにとってもその方が幸せだって、父さんが……』
「それを決めるのは、私よ。あなたたちじゃない」
私の声が震えているのが自分でも分かった。 悔しくて、しくて、何よりけなかった。 私が腹を痛めて産み、をせば夜通し病し、だらけのユニフォームを毎洗いして育ててきた息子が、父親の吐く嘘を都よくみ込んで、私を厄介払いしようとしている。
「あなた、お父さんがを売って千百万くれるって言ったから、あんなことしたのね」
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『……っ!』
息子の息を呑む音が、スピーカーから漏れた。
「あの資計画、見たわよ。実の売却代から千百万っていてあった」
『……何がいけないんだよ!』
亮太が逆したように声を荒らげた。
『俺たちだって必なんだよ! にいい環境で育ってほしいんだ! あの学区の戸建ては今契約しないと、のに取られちゃうんだよ! 母さんだってのことがいだろ!? 孫のためなら、それくらい譲ってくれたっていいじゃないか!』
「孫のため?」
私の唇から、乾いた言葉がこぼれ落ちた。
「のために、おばあちゃんのむ所を奪うの? に『このはね、おばあちゃんを老ホームに追いして買ったんだよ』って、胸を張って言えるの?」
『言えるわけないだろ! 袈裟に言うなよ! 老ホームじゃなくて、自型の綺麗なマンションみたいなとこだろ!』
息子の息遣いが荒くなる。 そして、次に続いた言葉が、私の臓を最もく、残酷に刺し貫いた。
『……それにさ。母さん、どうせ最はするだろ』
息が、止まった。
『昔からそうじゃん。父さんが鳴れば最は折れるし、俺が何か頼めば、自分の買うのしてでもしてくれた。母さんは文句言ったって、最は族のために折れてくれるじゃん。……今回だって、ちょっとやせば、のために判子押してくれるとってたんだよ』
の奥で、キーンと属音が響くようだった。
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私のの。 波をてないように、族が笑っていられるようにとみ込んできた無数の悔し涙。 鳴る夫にをげ、が儘を言う息子ので笑顔を作り続けた私の「優しさ」は。
息子にとって、ただの「都のいいさ」に過ぎなかったのだ。
こいつは最には折れる。 こいつは最にはする。 こいつには自分のなんてないから、踏みつけにしても構わない。
そうわせていたのは、でもない、の私自だった。
「……亮太」
私は、静かに息を吸い込んだ。 声の震えは、完全に止まっていた。
「私はね、あなたのお母さんだけれど。あなたのを買うための踏み台じゃないわ」
『は? 母さん、何言って――』
「もう度と、私のためにするなんてわないで」
通話を切った。 そして、息子の着信通をオフにした。
ベッドに倒れ込むようにして、井を見げる。 蛍灯のが、やけにくてたかった。 、私が信じて守ってきた「庭」というものは、最初から砂の楼閣だったのだ。 私という無料の労働力と、無制限ののにだけ成りっていた、いびつなハリボテ。
その、再びスマートフォンがさく震えた。
メッセージアプリの通。 息子の名ではない。
画面に表示されたのは――息子の妻、美咲さんからのメッセージだった。
『お義母さん、突然申し訳ありません。