"三十周年に施設へ捨てられた妻と予約主の息子" 第4話
「婚姻期に築いた財産は、名義がどちらであっても夫婦の共財産よ。私にも半分の権利があるわ」
「はあ!? おみたいなパートタイマーが何を言ってんだ! をしたのは俺の料だぞ! おはただの居候みたいなもんだっただろ!」
の事も、育児も、パート代からし続けた費や費も、この男ののでは「居候の居候代」に過ぎなかったらしい。
りを通り越して、乾いた笑いが込みげてきそうだった。
「織さん、聞こえましたか? このは、あなたにも息子にも、決して守れない嘘をついていますよ」
「な……!」
織の顔が、さっきとは違うに変わった。 疑と、計算。 この女も、決して何もらない無垢な被害者ではない。代半で、の夫の資産をあてにして転がり込んできた現実主義者だ。私の言葉の裏にある「の破綻」を、本能に察した顔だった。
「織、聞くな! こいつの言うことなんてデタラメだ!」 夫が喚き散らし、織のを引いてちがらせようとする。
「いいえ、今はここまでにしましょう」
私はすっとちがった。 ここでを相に鳴りいをしても、警察を呼ばれて沼になるだけだ。 本の警察は「民事介入」を盾にして、法な権利関係が確定していない段階の夫婦喧嘩には関わりたがらない。
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今ここで力づくで居座れば、かえって隙を与えることになる。
私は寝へ向かった。 夫が「おい! 何する気だ!」と追いかけてきたが、寝のドアを内側から閉め、鍵をかけた。
ドンドンとドアが叩かれる音を背に聞きながら、私はクローゼットの奥の引きしをけた。
私の実印。 の通帳。 帳。 マイナンバーカード。 保険証。 そして、スーパーのロッカーの鍵。
これだけは、絶対に渡さない。 これらを奪われたら、本当にに放りされる。
提げバッグに類を詰め、スーツケースに必な着替えを数分だけ詰め直した。 そして、机のに置かれていた枚のプリントが目に留まった。
先、息子が「いい物件見つけたんだよね」と無邪気に見せてきた、築建売宅の資計画。 鉛でかれた息子の丸っこい字。
『自己資:300万(美咲実より借入) 親からの贈与:1500万(実売却代) 宅ローン:3200万』
文字が、滲んで見えた。
私のを売ったが、息子の資計画に、当然の権利のように組み込まれていた。
寝のドアをける。 待ち構えていた夫が、私の荷物を見てで笑った。
「やっとてく気になったか。の程をったなら最初からそうしろ」
「勘違いしないで」
私は夫の目をまっすぐに見つめ返した。
「今てくのは、あなたたちと同じ空気を吸うのが耐えられないから。
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そして、弁護士を探すためよ。勝に私の荷物を処分したり、鍵を替えたりしたら、即座に占脱物横領と法為で訴えますから」
夫の顔が引きつった。 織はリビングのから、怯えたようにこちらを見つめていた。
玄関のドアをけ、のたい空気を吸い込む。 夕暮れの宅に、所の子どもたちの笑い声が響いていた。
守り抜いたを、私は度、背にした。 けれど、これは敗ではない。 絶対に、このまま終わらせてたまるものか。
駅のビジネスホテルにチェックインした。 シングルルームの狭いベッドに腰をろすと、全の関節が軋むように痛んだ。
靴を脱ぎ、ベッドサイドのさな机に提げバッグを置く。 バッグのから類を取りし、枚枚、指先で確かめる。 実印の入ったさな革ケース。 、私が円単位で計をやりくりしてきた通帳。 残は、私の名義の普通預に約百万円。 パートの料が振り込まれ、々の活費と息子の習い事、部活の征費、学の教科代に消えていき、残ったわずかなお。
私のは、この百万円と、あの段ボール箱つ分だけだったのだろうか。
その、ベッドののスマートフォンが鋭いバイブレーションを響かせた。
画面に表示された名は、『亮太』。
指先がたく張り、画面をスワイプするのを瞬ためらった。 だが、逃げるわけにはいかない。 通話ボタンを押し、スピーカーにする。