"三十周年に施設へ捨てられた妻と予約主の息子" 第1話
結婚周の、夫が珍しく束を買ってきた。
「今はおに、特別なプレゼントがある」
ぶりに、で事にくのだとった。
パート帰りのくたびれたカーディガンのままだった私に、夫は「着替えなくていい、そのまま乗れ」と助席のドアをけた。 渡されたのは、所のスーパーの先で売られているような、さな包みのガーベラ。 それでも、私はしだけ胸の奥が温かくなっていた。 この、族のために朝半から弁当を作り、鮮魚コーナーのたいで指をあかぎれだらけにしながら耐えてきた々が、ようやく報われたような気がしたのだ。
けれど、が止まったのはレストランではなかった。
見慣れない宅の坂の。 築の、無質なコンクリート造りの建物。 エントランスの自ドアの横には、『サービス付き齢者向け宅』という板が掲げられていた。
玄関を入ると、フロントの横に置かれたホワイトボードが目にび込んできた。
『本よりご入居 佐伯真紀様 より歓迎いたします』
私の名だった。
夫はトランクをけると、いつのに詰めたのか、私の用していた古いスーツケースをごとんとにろした。 そして、駆け寄ってきた受付の女性に向かって、営業用の当たりのいい笑顔を作って見せた。
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「今から妻がお世話になります。荷物はこれだけですが、よろしくお願いします」
喉の奥が、からからに渇いた。
私は歳だ。 今も週、スーパーの鮮魚コーナーでパック詰めと品しの仕事をフルタイムでこなしている。 介護認定どころか、健康診断で引っかかったことすらない。
「……何の冗談?」
声が震えて、うまく音にならなかった。 夫は私の顔を度も見ようとせず、スーツの袖を気にしながら、吐き捨てるように言った。
「もうには帰らなくていい。彼女がみ始めてるから」
……は? 彼女? み始めてるって、誰が?
がまったく処理できない私の横で、受付のスタッフが申し訳なさそうに元のタブレットを確認しながらをいた。
「ええと……佐伯真紀様ですね。本からの週お試し滞プラン、ご子息様の名義で事決済とお申し込みをいただいております」
息が、止まった。
ご子息様? 亮太が? 私の、たったの息子が?
臓が鐘のように打ち鳴らされる。 指先がえ切り、スマートフォンの画面をタップする指が激しく震えた。 息子の番号を押す。 コール音が回鳴って、すぐにつながった。
『もしもし、母さん? もう着いた?』
亮太の声だった。 休の昼がりにふさわしい、ひどくの抜けた、平然とした声。
「亮太、これ……どういうことなの? お母さん、今どこに連れてこられたか分かってるの?」
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話の向こうで、い、ひどく煩わしそうなため息が聞こえた。
『母さん、もういいだろ。みっともない真似すんなよ。……俺たちだってさ、も来学だし、そろそろ自分たちのが欲しいんだよ』
「……え?」
『父さんから聞いたよ。もう夫婦として無理なんだろ? 母さんもあんな広いでで暮らすより、ご飯も掃除も面倒見てくれる施設の方が楽じゃん。俺たちの邪魔、しないでくれよ』
プチ、と通話が切れた。
元で響くツーツーという無質な切断音を聞きながら、私はち尽くした。
理解した。 ようやく、全てがつながった。
夫は、しい女のために私を捨てたかった。 そして息子は、自分がを買うをに入れるために、母親の帰るを売り払いたかったのだ。
「……佐伯様? お部へご案内いたしましょうか?」
困惑した表のスタッフが、恐る恐る声をかけてくる。 夫はすでにエントランスの自ドアへ向かい、背を向けて歩きしていた。 私をここに置きりにして、そのままをすつもりなのだ。
「待ってください」
私のからた声は、自分でも驚くほどく、え切っていた。
「私はこの施設への入居もお試し滞も、切希望していません」
「えっ……でも、ご族様からのお申し込みが……」
「本の同のない契約は無効です。私は歳で、能力も判断能力もあります。
息子の勝な申込です。このまま無理に滞させようとするなら、監禁として警察を呼びます」