"夫の死後、最後のお別れすら奪われた私" 第17話
ポケットからスマートフォンを取りす。 カメラのタイマーを、秒に設定した。
窓際のが差し込む所に、夫のさな遺を置く。 の、し照れくさそうに笑う夫の顔。
私はその隣に、静かに腰をろした。
画面ので、カウントダウンの数字が点滅する。 3、2、1。
カシャ、と乾いた子音が静寂を裂いた。
画面を確認する。 逆ので、遺の隣に並んだ私の顔。 目尻には皺が増え、髪にもいものが混じっている。 笑ってはいなかった。 けれど、怯えても、泣いてもいなかった。 ただ、すべてを引き受け、すべてを清算し終えた女の、静かな顔がそこにあった。
「健さん」
骨壺に向かって、声をして呼びかけた。 の習慣が、最の度だけ、喉を震わせた。
「あなたのこと、嫌いになれたらよかったのにね」
苦笑が漏れた。 本当に、の底から憎み切れたなら、どれほど楽だっただろう。 あのの沈黙も、隠し座の通帳も、全部「悪魔の仕業」として吐き捨てられたなら、どんなに痛まずに済んだだろう。
けれど、この男は悪魔ですらなかった。 ただの、くて、卑怯で、自分さに嘘を塗りねて逃げ回った、どこにでもいる愚かな男だった。 そして私は、そんな男をもしてしまっていた。
その事実だけは、どんな法律でも消しることはできない。
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「さようなら」
私は未送信のを、夫の遺のに滑り込ませた。 骨壺を抱えげ、い布で包む。 の回りのものを詰めたスーツケースの取っを引き、私は玄関へと向かった。
鍵を閉める。 ガチャリというい属音が、の々に完全な蓋をした。
駅のホームには、夕暮れのたいが吹き抜けていた。
を待つ々の群れので、私はコートのポケットに両を突っ込んでいた。 指先が触れたのは、区役所で受け取ったしい民票の写し。
氏名欄の文字を、指の腹でなぞる。
佐藤ではない。 私がまれてからく名乗っていた、父と母の姓。 私の、本当の名。
スマートフォンがく震えた。 画面を見ると、見らぬ産からのメール通。 しく契約した、見らぬの、さな居のアパートの鍵の引き渡し連絡だった。
薔薇の庭はない。 広いも、誰かのための台所もない。 ただ、私が、私の稼いだおで、私のを使ってきていくための部。
くから、のづく規則正しいレール音が響いてきた。
が、私の頬を撫でていく。 荒れて赤くなったの薬指には、もう何も嵌まっていない。 たいの触だけが、皮膚のに直接触れていた。
私はを向き、ホームの黄い線の内側に歩、を踏みした。