"介護を奪われた私へ「お母さん、やっと会えた」" 第1話
「子供も産めなかったおは族じゃない。ていけ」
その言葉が落ちた瞬、の法を終えたばかりの静かなリビングは、氷を流し込まれたようにえ切りました。
私は鳴り散らすことも、取り乱して泣き叫ぶこともしませんでした。 ただ、台所の布巾を握りしめたまま、ち尽くしていました。
目のには、連れ添った夫の浩司がっています。 歳。し腹のた、どこにでもいる会社員です。 そしてその腕のには、まだ首もすわりきらないさな赤ん坊が抱かれていました。
夫のすぐ隣には、私の半分ほどの齢に見える若い女性が、勝ち誇った笑みを浮かべて寄り添っていました。 鈴美、歳。 彼女の首筋から漂う甘ったるいの匂いが、仏壇から微かにちる線の静かなりを、容赦なく塗りつぶしていきます。
「驚いたか、由美。紹介するよ、美だ。そして俺たちの息子の蓮だ」
夫はまるで、でも買ってきたかのような軽い調で言いました。
美と呼ばれた女性は、私をからまで値踏みするように眺めると、い唇の端を吊りげました。
「初めまして、おばさん。浩司さんから々聞いてますよ。もおじいさんの介護、本当にお疲れ様でした。の世話まで全部タダでやってくれたって聞いて、謝してます」
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その声の底には、隠しようもない嘲笑と、今からこのの主は自分なのだという傲さが満ちていました。
ここは、つい先まで私が義父の正雄さんを介護していたです。 歳で倒れ、脳梗塞の遺症で体の自由がきかなくなった義父を、私はこの、ほぼ付きっきりでてきました。 昨のを終え、ようやく親戚への挨拶も段落し、義父の遺ので静かにお茶をんでいた矢先の来事でした。
夫はスーツの内ポケットから、枚のを取りしました。 緑の枠線が印刷された。 婚届です。
それを、義父が好きだった檀のローテーブルのに、放り投げるように滑らせてきました。
「親父もんだんだ。おがこのに居座る理由はもう何もない。これからは俺と美、そして蓮のでしい活を始める。今に荷物をまとめてていけ」
の央には、すでに『佐藤浩司』の署名と鮮やかな朱肉の印鑑が押されていました。 証の欄にも、見らぬ名がつ並んでいます。
「あんたも分かってるだろ。俺たちの夫婦関係なんて、とっくの昔に終わってたんだよ。親父がきてるは世体があったからしてやったが、もうその必もない」
夫の言葉は、まるで何もから用されていた台のように滑らかでした。
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義父が倒れてからの、夫は介護の現から逃げ続けました。 夜に義父がベッドから滑り落ちて助けを求めたときも、 「も仕事なんだよ、おが何とかしろ」 と鳴って毛布を被り、やがて「介護の匂いがするから息が詰まる」と言って、泊を繰り返すようになりました。
仕事だと信じようとしていたそののすべてが、この美という女性と過ごし、子供を作るためのだったのだと、今になってようやく線が繋がりました。
美が赤ん坊の背をトントンと叩きながら、リビングを見回しました。
「浩司さん、本当にこのをリフォームしてくれるんですよね? 古い柱とか、この暗い畳の部とか、全部ぶち抜いて最のカウンターキッチンにしたいな。おばさんの染みついた活臭も、全部消してもらわないと赤ちゃんに悪いですし」
「ああ、もちろん全部好きにしていい。おと蓮のためのだからな」
夫は目を細めて美に笑いかけ、それから私に向き直ると、たい目を向けました。
「慰謝料代わりに、おの個の座にある貯くらいは持ってっていい。文句はないだろ。子供のも産めず、業の跡継ぎも残せなかった女を以も養ってやったんだ。謝してほしいくらいだ」
子供を産めなかった女。
その言葉が、私の胸の番奥にある、固まりかけていた傷を容赦なく抉りました。
私は歳の、に及ぶ辛い妊治療の末、医師から「これ以は体が持ちません」