"流産を嗤う義母と四十年前の手紙" 第11話
ナースコールを押すのを慮して、ずっとしていたみたいでね。私が吸いみでおをませてあげたら、震えるで私のの袖を掴んで……『文さん、けないよ』って」
文さんは、ベッドの脇のパイプ子に座り、義母ときりでいを過ごしたという。
病の静けさので、義母はぽつりぽつりと、の記憶を語り始めた。
『昔、私が盲腸で入院したもね……あのの父親は、度も病院に来なかったよ。親戚の寄りいがあるからって、私を病院に置きりにして、で酒をんでた。姑には「仮病を使って事をサボるな」って面会で鳴りつけられてね』
義母は、乾いた唇を震わせながら呟いたそうだ。
『私、あの本当に悔しくて……で病の布団を被って、声を殺して泣いたんだよ。誰かに優しくされたかった。誰かに、「変だったね」って背をさすってほしかった』
文さんは、その言葉を遮ることなく静かに聞いてから、義母にこう問いかけたという。
『幸子さん。じゃあ、由美さんがに赤ちゃんをくした、あなたは何をしてあげたの?』
義母は息を呑み、言葉を失った。
『血を流して倒れている由美さんに、救急も呼ばず「げさだ」って笑ったんでしょう。退院してきて泣いているあのに、「若いんだから次を産めばいい」
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って言い放ったんでしょう。……あなたがに姑からされた仕打ちと、何が違ったの?』
義母は何も言い返せず、ただシーツを握りしめて震えていたという。
『由美さんがこのにいた、あなたが邪を引いた、誰がお粥を炊いて枕元に運んでいた? が痛いと愚痴をこぼした、誰が毎湿布を貼り替えていた? 健さんかい? 違うでしょう。全部、由美さんじゃないの』
文さんの厳しい言葉が、静かな病に突き刺さる。
『あなたがに入れたかったのは、族じゃなかったのね。自分がかつて受けた傷を癒すために、自分よりのい贄が欲しかっただけよ。……幸子さん、もうやめなさい。これ以、あの優しい子をあなたの呪いに巻き込むのは、おやめなさい』
文さんはそう言い残し、病をにしたという。
「由美さん」 話の向こうで、文さんが優しく息を吐いた。
「あなたが戻る必なんて、爪の先ほどもないわ。あので起きたことは、すべてあのたちが自分で蒔いた種よ。あなたはもう、だけを向いてきなさいね」
「……文さん、ありがとうございます」
受話器を置いた、私はしばらく暗い部のでち尽くしていた。 胸の奥の澱みが、しずつ、けれど確実に解けていくのをじていた。
そして、その週末の夜。
刻は午を過ぎていた。
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私がさなアパートで、のパートの準備をしていただった。
スマートフォンの画面がった。 表示されたのは、見覚えのない固定話の番号。 局番からして、義母が入院している総病院の公衆話からだった。
胸騒ぎがした。 瞬、無しようと指を引っ込めた。 けれど、逃げ続けるのも違う気がして、私はゆっくりと通話ボタンをスライドさせた。
「……もしもし」
受話器の向こうから、ヒュー、ヒューと掠れた呼吸音が聞こえてきた。 数秒のい沈黙。 やがて、信じられないほどさく、震える老女の声がに届いた。
『……由美さん、かい……?』
義母だった。 、私を呼びつけるに使っていた、あの傲で棘のある甲い声ではなかった。 今にも消え入りそうな、々しい、ただの老いた女の声。
「……はい。由美です」
私がを押し殺して返事をすると、受話器の向こうで義母が息を詰まらせる音がした。
『由美さん……ごめんよ……』
その言が落ちた瞬、私の指先が凍りついた。
『本当に……悪かった……。古希の祝いの席でも……、ずっと……あんたに酷いことばかり言って……』
受話器の向こうから、シクシクとしゃくりげるような泣き声が漏れてくる。
『膝が痛くてけなくなって……でベッドにいて……ようやく分かったんだよ。あんたがどれだけ……たい台所で……で耐えていたか……。
私、あんたに酷いことをした……。赤ちゃんのことだって……取り返しのつかないことを……本当に、ごめんなさい……』
。 私が血を吐くいで求め続け、度たりともに入らなかった言葉。