"流産を嗤う義母と四十年前の手紙" 第8話
必な公続き、受けるべき政サービス、族としてやるべき配のすべてを、目で分かるようにファイリングして置いた。 これを引き継ぎ、実するのは、実の息子である夫と、実の娘である奈緒さんの仕事だ。
つ目は、私のきのメモ。
『本をもって、このをます。 お義母さんの術および退院の活支援について、私は切関与しません。 今の連絡は、すべて弁護士を通じています』
そしてつ目。
田の玄関の鍵。 真鍮の鍵が、蛍灯のを浴びてたくっていた。
私はキャリーケースの取っを握り、玄関へと向かった。 靴を履き、ドアノブにをかける。
振り返ることはしなかった。 、私の涙と絶望が染み付いたこのに、何の未練もなかった。
カチャリ、と静かに鍵を閉める。 にた瞬、夜のたいが頬を叩いた。 息を吸い込む。 胸の奥まで、澄んだ空気が満ちていく。 肺が痛むほどにたい、けれど甘やかで自由な空気。
私は度もを止めることなく、駅へ向かって歩きした。
翌朝、午分。
私のスマートフォンのバイブレーションが、けたたましく鳴り響いた。 画面には『夫』の文字。
私は居のさなキッチンで、湯を沸かしながら通話ボタンを押した。 スピーカーにしなくても、受話器の向こうから夫の苛ちに満ちた鳴り声が漏れ聞こえてくる。
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『おい、由美!! お、今どこにいるんだよ!?』
計の針の音。 受話器の奥から、ガサゴソと蔵庫の扉を乱暴にけ閉めする音が聞こえる。
『蔵庫の、何にも入ってないぞ! 朝飯はどうしたんだよ! 俺のスーツのワイシャツもアイロンがかかってないし、母さんが腹減ったって部から呼んでるんだぞ!』
息にまくしたてる夫の声。 パニックとりが混ざりい、息が荒くなっているのが分かる。
『テーブルのの置き、なんだよあれ! 鍵置いててくって、何の冗談だよ! おい、聞いてるのか!? 今の俺の弁当はどうなってんだよ!!』
弁当。 朝飯。 ワイシャツ。 母親の呼びし。
この期に及んで、このがにするのは自分の活の便さだけだった。 妻がなぜてったのか、どれほどの絶望を抱えて鍵を置いたのか、その理由を考えることすらしていない。 ただ、「自分のの回りの世話をする召使い」が消えたことに激しているだけ。
私は、沸騰したヤカンをからろした。 マグカップに注がれた湯から、ちるい湯気を見つめながら、静かに、言だけをいた。
「もう作りません」
『……は?』
「あなたの朝ご飯も、お弁当も、お義母さんの世話も。私はもう、度と作りません」
『お、おい、ふざけるなよ! 母さんの術はどうするんだよ! 俺が仕事休めるわけないだろ! お、男の嫁としての責任を――』
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「私はあなたの部でも、お義母さんの介護ロボットでもありません」
私は夫の言葉を遮った。 を交えず、ただ事実だけを告げる声で。
「全部、あなたが自分でやってください。親孝な息子なんでしょう?」
ツーツー、と通話終の無質な子音が部に響いた。
私はスマートフォンの着信を拒否設定にし、画面を伏せてテーブルに置いた。 淹れたての温かい湯を、喉に流し込む。
窓のでは、京の空がみ始めていた。 、度もじたことのなかった静かな朝が、ようやく始まろうとしていた。
アパートの畳に敷いた、い煎餅布団。 仰向けになって井の染みを見つめた、真っ先にじたのは寂しさでもでもなかった。
静寂。 ただ、圧倒な静けさだった。
朝のに鳴り響く義母の杖の音もない。 「おい、俺の靴はどこだ」と鳴り散らす夫の声もない。 ただ、窓のをる始発の微かな震と、自分の規則正しい呼吸の音だけが聞こえていた。
キッチンでお湯を沸かし、スーパーで買った百円のパンを焼く。 誰の嫌も伺わず、誰の顔も窺わない朝。 ぶりにべたトーストは、呆れるほどがした。 噛み締めるたびに、喉の奥がきゅっとくなった。
けれど、田の現実が私を完全に放してくれるはずもなかった。
をて。 着信拒否を続けていた私のスマートフォンに、義妹の奈緒さんからメッセージが届いた。