"流産を嗤う義母と四十年前の手紙" 第6話
……は?
を疑った。 臓の鼓が、ドクンと嫌な音をててねがる。
「健さんが……そう言ったの?」
「そうよ! 『由美が自分から仕事を減らして、母さんの事や通院の世話を全部引き受けるって言ってくれたから、奈緒は無理して伝いに来なくていい』って……私、てっきりお義姉さんが納得して決めたんだとってた」
喉の奥が、ぎゅっと締め付けられるように苦しくなった。
嘘だ。 私がそんなことを言うはずがない。 夫は、妹に対しても嘘をついていたのだ。 最初から私を都のいい無料の介護員として差しすために、親族全員に「妻が志願した」と吹き込んでいた。
「奈緒さん、もうつ教えて」 震える唇を必に押さえつけながら、私は奈緒さんの目をまっすぐに見据えた。
「、私たちがこので同居を始めた……お義母さんは、何て言っていたの?」
奈緒さんは戸惑ったように線を泳がせた。
「え、それは……お義姉さんが同居を望んだんでしょ?」
「……私が?」
「そうよ。お父さんがくなって実が広すぎるから、お母さんは最初、このを売って駅のさなシニア向けマンションに引っ越すつもりだったのよ。で気楽に暮らしたいって。でもお兄ちゃんが、『由美さんは両親をくにくしているから、暮らしの寂しさに耐えられない。お母さんと緒にきなで暮らしたがっている』って、お母さんを説得したんじゃない」
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全から血の気が引いていくのが分かった。 指先がたくなり、喫茶のざわめきが急にのいていく。
……全部、逆だった。
、結婚が決まった、夫は私のを握って涙ぐみながら言ったのだ。 『母さんは父親をくしてで寂しがっている。男の俺が実に残ってやらないと、母さんがなんだ。由美、しのだけでいいから、実で緒に暮らしてくれないか?』
私はその言葉を信じた。 くに両親をくし、族の温もりに飢えていた私は、夫の親孝な気持ちを支えたいとからった。 義母が同居を望んでいるのだと、信じ切っていた。
けれど、真実は違った。
義母は、で自由に暮らしたかった。 そこに「嫁がどうしても同居したいと言っている」と嘘をついて転がり込んだのは、夫だった。 賃を浮かせ、母親の資産に寄し、事の切を妻に押し付けるために。
そして義母には「嫁が同居をせがんだ」と吹き込み、 私には「母さんが寂しがっている」と吹き込み、 妹には「嫁が介護をやりたがっている」と吹き込んでいた。
。 私が義母から受けた無数の嫌、酷な仕打ち、台所での孤。 義母が私を「図々しく転がり込んできた嫁」として見し、支配しようとした根底には、夫が撒き散らしたこの真っ赤な嘘があったのだ。
夫はの女のにち、互いに報を遮断し、自分だけが「板挟みで苦労する優しい息子であり夫」
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を演じ続けていた。 をかぶるのは常に私。 母親の悪をに受け止める防波堤にされていたのは、私だけだった。
「お義姉さん……? 顔、すごく悪いよ……」
奈緒さんの怯えたような声が聞こえる。 私はく、く息を吐きした。 りすら湧いてこなかった。 胸のにあるのは、氷のようにたく澄み切った、絶対な諦だった。
「奈緒さん。私、来からの病、切やらないわ」
「えっ……でも、じゃあ誰が……」
「あなたがやって。実の娘でしょう?」
「無理だよ! 私、パートもあるし子供の塾の送り迎えだってあるのに!」
奈緒さんが即座に声を荒らげる。 自分の活はミリも犠牲にしたくないという、本能な拒絶。 の私には「てくれるなら」と平気で押し付けておきながら、自分の番になった瞬、全力で逃げそうとする。
これが、この族の本質だ。
「じゃあ、健さんにやってもらって。あのの母親よ」
私は伝票をに取り、席をった。 引き止める奈緒さんの声を背で断ち切り、夜のたい空気のへと踏みした。
そので、私は駅の反対側にある産へ向かった。
閉際のさな舗。 ガラス戸を押しけ、カウンターに座る配の男性スタッフに告げた。
「すぐに契約できて、敷礼が抑えられる単用の物件を探しています。