"流産を嗤う義母と四十年前の手紙" 第5話
あなたたちが望む「族の形」は、よく分かった。
なら、見せてあげる。 私という防波堤がいなくなった、そのがどうやって崩れ落ちていくのかを。
翌朝、午。
台所につ私の背に、夫の平然とした声がってきた。
「昨の話だけどさ。パートのシフト、今にでもに言って減らしてもらいなよ。母さんの術、来のだから。退院の付き添いもあるし、めに調しといてくれよな」
洗面所から響く、歯ブラシの規則正しいモーター音。 鏡ので寝癖をえながら、夫は度もこちらを見ようとしない。
昨夜、義母の古希祝いで起きた修羅など、まるで最初からしなかったかのようだった。 の親戚ので私が浴びせられた罵声も。 のを突きつけられて発狂した義母の号も。 すべては「いつもの面倒な揉め事」として、夫のので綺麗に片付けられていた。
シンクのに浸けた指先が、じんじんと痛む。 私は振り返らず、鍋の噌汁をお玉ですくいながら、く問いかけた。
「……私のパート、千百円よ。に万円。それを半分以に減らしたら、私の国民や保険料はどうするの?」
夫は歯ブラシをからし、鏡越しに怪訝そうな顔をこちらに向けた。
「は? そんなの、俺の料から適当に補填すればいいだろ。
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何を細かいこと気にしてるんだよ。母さんの膝のほうが事だろ」
適当に補填。 結婚して、夫が活費として私に渡していたのは、毎決まった万円だけだった。 費、用品、義母の嗜好品、冠婚葬祭の積。 りない分はすべて、私のパート代から持ちしていた。 それをっていながら、このは「適当に補填」と言い放つ。
私が自分のでち、社会と繋がっているわずかなを奪うことに、何の痛みもじていない。
「母さんは悪気がないんだから、おがしろ」
昨、夫が吐き捨てた言葉が、の奥でたくリフレインする。 私は何も答えず、ただ静かにを止めた。
そのの午、パートの休憩でスマートフォンの画面が震えた。
画面に表示された名は、田奈緒。 夫の妹であり、隣にむ義妹だった。
『お義姉さん、昨はごめんなさい。あの、お母さんとお兄ちゃん、丈夫だった?』
昨の宴席に夫と学の子供を連れて参加していた奈緒さんは、義母が鳴り始めた途端、子供を連れて逃げるように帰宅していた。 いつもそうだった。 実の穏な空気を察する能力だけは倍く、面倒な面には絶対に巻き込まれないようにち回る。
私はし迷った、く返信を打った。
『丈夫ではありません。奈緒さん、今夜しだけをもらえませんか。
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お義母さんの術のことで、直接話したいことがあります』
分、奈緒さんから『仕事帰りに、駅の喫茶なら』と返ってきた。
午半。 私鉄の改札くにある、くたびれた純喫茶の奥の席。 トレンチコートを着た奈緒さんは、運ばれてきたアイスティーのストローを落ち着かなさそうにいじっていた。
「……お義姉さん、お母さんの術のことって?」
私は帳をき、昨夜夫から方に告げられたスケジュールをテーブルのに置いた。
「健さんから聞いたの。来に術で、退院は私がパートを減らして、付き添いと宅の病を全部やることになっているって。親戚ので、そう発表されたわ」
奈緒さんは目を瞬かせ、あからさまに居の悪そうな顔をした。
「あ、うん……お兄ちゃんからLINEで聞いた。お義姉さんがてくれるならだね、って返したんだけど……」
「奈緒さん。私は、そんなこと言も承諾していないの」
私の声のさに、奈緒さんのが止まった。
「え……?」
「健さんが勝に決めて、親戚ので既成事実にしたのよ。私は仕事を辞める気もないし、減らす気もない。平の昼、毎義母の介護に専するなんて約束、度もしていないわ」
奈緒さんの顔から、表がすっと消えた。 そして、眉をひそめて信じられないというように私を見つめた。
「待って、お義姉さん。どういうこと? お兄ちゃん、先週私に話してきたのよ。『由美が、子供もいないしにいても退屈だから、母さんの病をしっかりやりたいって言いした』って」