"5kmで3万円、客は元タクシー運転手だった" 第5話
話を聞くにつれて、ゆい子の顔がみるみる険しくなっていく。
彼女は信じられないというように声をげた。
「3万円、5kmで。そんなのどう考えてもおかしいじゃない」
私はく頷いた。
「ええ、おかしいわ」
私は帳を指差した。
「しかもね、領収もくれなかったの」
ゆい子は机を叩いた。
「領収も、それわざとよ。証拠残さないようにしてるんだわ」
私は静かに同した。
「ええ、私もそうう」
ゆい子は悔しそうに顔をしかめた。
「ひどい。ぼったくりじゃない」
彼女は私の顔を配そうに覗き込む。
「でもお母さん、もう払っちゃったんでしょ?」
私は静かに答えた。
「払ったわ。言われた通り全部」
ゆい子はきくため息をついた。
「だったらもう済んだことよ」
彼女は私のを握った。
「悔しいけど、3万円で済んだとって忘れた方がいい」
ゆい子は私を気遣うように続ける。
「に騒いだらお母さんが嫌ないをするだけだもの」
娘は私を案じてそう言ってくれている。
それは分かっていたけれど、私はゆっくりと首を横に振った。
「ゆい子、これはね、私1の3万円の問題じゃないのよ」
ゆい子は戸惑ったように私を見た。
「え?」
私は彼女の目をまっすぐに見つめた。
「あの運転は慣れていた。メーターを使わないやり方も、嘘の並べ方も、全部慣れていたの」
私は言葉に力を込めた。
「あれは初めてじゃない。
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きっと今までに何も同じように寄りから巻きげてきたのよ」
ゆい子は言葉を失い、黙り込んだ。
私はさらに続けた。
「が悪くてタクシーにしか頼れない寄り」
私は自分の膝に目を落とした。
「文句も言えずに泣き寝入りするしかないたち」
私は顔をげ、再び娘を見た。
「私がここで黙ったら、あの男はもまた誰かを同じ目にわせる」
私は胸にを当てた。
「それをうとね、私はどうしても見過ごせないの」
私はテーブルのの携帯話をにした。
「これを聞いてちょうだい」
私は携帯話の録音を、もう度最初から再した。
蛭田のたい声が、台所に響き渡る。
ゆい子は唇を噛みしめて、最までじっと聞いていた。
聞き終えると、その目にはっきりとりのが浮かんでいた。
彼女は震える声で言った。
「ひどい。本当にひどい。こんなの許せない」
私は携帯話の画面を見つめた。
「ええ、おかしいと気づいてからずっと回していたの」
ゆい子はそうに私を見た。
「でもお母さん、録音だけでちゃんと取りってもらえるのかな?」
彼女は線をさまよわせる。
「向こうがらないって言い張ったら」
私は帳を彼女のに押しした。
「だからね、録音だけじゃないのよ」
私はき込んだ文字を指差した。
「のナンバー、運転者証の番号、乗った刻もりた刻も、全部この帳に控えてあるの」
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私は自信を持って告げた。
「った順も覚えている。1つ1つはさくても、わせれば言い逃れのできない証拠になる」
ゆい子は驚いたように私を見つめた。
「お母さん、いつのにそんな?」
私はしだけ微笑んだ。
「これでもくの仕事をしてきたのよ」
私はペンを置いた。
「こういう何を残しておけばいいかは、体が覚えているの」
娘は母のらない面を見たように、私の顔をじっと見つめ続けた。
それから彼女は、し声を落として言った。
「わかった。お母さんがそこまで言うなら、私も伝う」
ゆい子は私のをく握った。
「でも1で会いにったりしないでね。相が何をするか分からないんだから」
私は娘のを握り返した。
「ありがとう。丈夫よ。私には当たりがあるの」
私は昔のことをいしながら言った。
「昔お父さんが世話をしたでね、今も業界で信頼されているなの」
私は力く頷いた。
「義理を欠かさないだから」
ゆい子はしたように息を吐いた。
「分かった。じゃあ私も最まで付きう」
彼女は真剣な表で約束してくれた。
「お母さんを1で戦わせたりしないから」
娘の言葉が、えた胸にじわりと温かく広がった。
1ではないとえるだけで、かった。
私は帳に並んだの番号を、もう度指でなぞった。
たかった指先に、いつのにかが戻っていた。
その夜、私は居の話のに座り、1本の話をかけた。