みかん小説
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"5kmで3万円、客は元タクシー運転手だった" 第3話

私は顔をげ、彼の横顔を見つめた。

「運転さんはこの仕事いんですか?」

蛭田は得げにを鳴らした。

「いよ。だから黙って乗ってりゃいいんだ」

私は再び線を窓のに向けた。

男の言うことはでたらめだった。

でもこのの川沿いは空いている。

私はこのを、誰よりもよくっていた。

40、毎のようにこの町をってきたのだから。

それでも私は何も言い返さなかった。

膝のでを組み、流れていく景をただ静かに眺めていた。

信号で止まるたび、男は舌打ちをした。

彼は独り言のように毒づく。

「全くこんなのにわざわざ霊園までね」

彼はさらに声をきくする。

「寄りはでしくしてりゃいいのに」

けれどその声は、わざと私に聞かせているのだった。

私が黙っていると、男はルームミラーを覗き込んだ。

「どうせ毎暇なんでしょ。もらってさ」

私は静かに彼の目を見つめ返した。

「運転さんは忙しいのね。こんなのまで」

蛭田の顔が歪んだ。

「は何が言いたいんだよ」

ただの世話のつもりだった。

けれどこの男には、寄りの何気ない言さえ何かの当てつけに聞こえるらしい。

男はふんとを鳴らすと、吐き捨てるように言った。

「あんたみたいにお儀よくしたって損するだけだよ」

彼はを見つめたまま、得げに続ける。

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「世のってのはな、領なんだ。俺は賢く稼ぐ」

彼はら笑いを浮かべた。

「綺麗事じゃ飯はえないんでね」

私は唇を固く結んだ。

返す言葉はいくらでもあったけれど、何も言わなかった。

腹がつというより、しかった。

私も40、同じ運転席に座ってきた。

のはお客さんのが濡れないよう、先にを寄せた。

疲れて眠ってしまったお客さんには、起こさないようそっとまで送り届けた。

そうやってお客さん11を切にする。

それが私の誇りだった。

なのにこの男はどうだろう。

同じハンドルを握りながら、ろの客をともっていない。

寄りと見れば、ただのになる荷物。

それくらいにしか考えていないのだ。

私が40真面目に続けてきた仕事を、こんなにもたやすく汚すがいる。

そううと、胸がしんとえていくようだった。

逃げのない部座席で、私はもう度メーターに目をやった。

表示は相変わらずかないままである。

料は1円も表示されていない。

私はポケットのの携帯話を握りしめた。

メーターを使わないこの男は、をりる体いくら求するつもりなのか。

それをうと、背筋にたいものがった。

ようやく霊園のが見えてきた。

メーターも倒さないまま、は20分以もり続けていた。

蛭田はを止めた。

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彼は振り返りもせずに、運転席から言い放った。

「料は3万円です」

私はを疑い、彼の横顔を見つめた。

瞬聞き違いかとったけれど、男の元はく笑っている。

5kmほどののりだ。

どんなに見積もっても、2000円に届くかどうかである。

それを3万円。

15倍もの数字を、この男は平然とにした。

私は声を震わせないように気をつけながら問い返した。

「3万円ですか?メーターも回っていませんでしたけれど」

蛭田は面倒くさそうに首を振った。

「だから言ったでしょう。この距は貸切り扱い。の割り増しも入ってんの」

彼はルームミラー越しに私を睨んだ。

「メーターは壊れててね。現だけでお願いしますよ」

私は静かに彼を見つめた。

からでまかせだった。

貸し切りも割り増しも、そんな決まりはない。

メーターが壊れているなら、本来は客を乗せてはいけない。

壊れていると言い張るのは、証拠を残さないためだ。

私はその全てを分かっていた。

私は鞄から財布を取りしながら言った。

「領収をいただけますか?」

蛭田はきな声をした。

「はあ。だから械が壊れてるって言ってるでしょ」

彼はあざ笑うように続ける。

「領収なんかおばあちゃんに必ないでしょうが」

私は彼から目をそらさずに言った。

「でもおを払うのですから、普通はいただけるものでしょ」

蛭田の顔から作り笑いが消えた。

「普通がどうとか面倒くさい客だな」

男の声が急にたく尖った。

「メーターも使ってないのにおかしいでしょって言いたいわけ」

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