"介護を奪われた私へ「お母さん、やっと会えた」" 第15話
、私のに張り付いていた分い氷が、音をてて完全に溶けっていくのをじていました。
それから、が過ぎました。
季節は巡り、端のアジサイが瑞々しい青やのを咲かせる初が、再びやってきました。
浩司との婚は、公正証を作成したで正式に成しました。 実のと建物は、恵子さんと浩司ので適切に売却続きがめられ、得られた売却益から、私の過の介護に対する寄与分相当額と、貞為に対する慰謝料が、きっちりと私の座に支払われました。
夫は今、会社の郊の独寮で暮らし、毎の与から美への養育費と残債の返済を引かれ、爪にをともすような活を送っていると、恵子さんからの定期連絡で聞きました。 美もまた、実の両親にをげてを寄せ、パートを掛け持ちしながら赤ん坊を育てているそうです。
けれど、今の私のには、彼らに対する憎しみも、復讐のも、何つ残っていませんでした。 彼らはもう、私のの界のにある、い過のに過ぎませんでした。
私は今、駅の反対側にある当たりの良い階建てのアパートで暮らしています。 ベランダには義父が好きだった陽の鉢植えを置き、さなキッチンには、自分がべたいものだけを作るための調料が並んでいます。
広告
そして平の昼、私は内の『域子育て支援センター』で、非常勤の支援員として働いていました。 週に、放課に集まってくる子供たちに宿題を教えたり、芸や作のワークショップをいたりする仕事です。 病院の事務パートと内職で培った経験、そしてのボランティアの記憶が、わぬ形で私のしいを支えてくれていました。
「由美先、この巾着袋の紐、通せない!」 「先、ボタン付け教えて!」
午のプレイルームには、子供たちの賑やかな笑い声が溢れていました。 とりどりの端切れを広げ、針と糸をにした子供たちのさな指先を、私は優しく支えながら教えます。
「いい? ここをし引っ張って、玉結びをキュッと引き締めるのよ」
「できた! 先、ありがとう!」 満面の笑みで巾着を掲げる子供たちのを撫でながら、私はからの充に包まれていました。
午を過ぎ、子供たちが、またと迎えに来た保護者のを引いて帰っていきました。
静けさを取り戻したフロアで、私がミシンを片付けていると、入りの引き戸がガラガラとく音がしました。
「こんにちはー」
しびた、澄んだ声が響きました。
顔をげると、紺のブレザーの制を着た、背のい女がっていました。 肩まで伸びた黒髪を揺らし、し照れくさそうに笑っています。
広告
「葵ちゃん!」
私はわずを止め、笑顔で駆け寄りました。
「部活、終わったの?」
「うん。今ね、推薦入試の論文の模試が返ってきたんだけど、すごくいい判定だったの!」 葵はスクールバッグから成績表を取りし、誇らしげに広げて見せてくれました。 「先がね、『文章にかれている族観や関係の洞察が、とはえないほどい』って言ってくれたよ」
「まあ……! すごいじゃない、葵ちゃん!」
私は葵の肩を抱き寄せ、自分のことのようにびました。 葵の体はよりもしびて、でも私を抱きしめ返す温もりは、ののと何も変わっていませんでした。
その、まだ部に残って絵本を読んでいた歳の男の子が、議そうに私たちを見げて言いました。
「ねえ、お姉ちゃん。由美先の子供なの?」
無邪気な、悪のない問いかけでした。
かつての私なら、その言葉に瞬息を詰まらせ、「ううん、違うのよ」と力なく否定していたかもしれません。 血の繋がりがないこと、子供を産めなかったことへの引け目が、胸のどこかに疼いていたはずでした。
しかし、葵はしもじることなく、その男の子の目線にわせてしゃがみ込みました。 そして、私のをぎゅっと握りしめ、誇らしそうに微笑んだのです。
「違うよ。でもね、世界で番、私のことを切にしてくれた、私のお母さんだよ」