"介護を奪われた私へ「お母さん、やっと会えた」" 第9話
というに、最初の決定な亀裂が入った瞬でした。
翌の午、私は恵子さんに付き添われ、再びあのへと向かいました。
私が置きりにしてきた物の類や、仕事用の裁縫ミシンを引き取るため、そして恵子さんが父親の遺品と通帳の原本を確認するためでした。
初のい差しの、懐かしい扉をくぐると、玄関のに見慣れないゴミ袋が積みにされていました。 には、義父が縁側で切に育てていた盆栽の鉢のかけらや、義父が用していた古い座布団が無造作に突っ込まれていました。
恵子さんが息を呑み、拳を握りしめるのが分かりました。
インターホンは鳴らさず、恵子さんが実の鍵を差し込んで引き戸をけました。
を踏み入れた瞬、異様な悪臭がを突きました。 線の静かなりは完全に消え失せ、部に充満していたのは、むせ返るようなっぽいの匂いと、腐敗したゴミの匂い、そして使用済みのオムツが放つ烈なアンモニア臭でした。
リビングの引き戸をけた瞬、を劈くような赤ん坊のがついた泣き声がび込んできました。
「ぎゃああっ! ぎゃああっ!」
部のは、目を疑うような惨状でした。
かつて私が毎朝雑巾がけをしていた磨き抜かれた廊には、脱ぎ捨てられたのや、半分み残したペットボトルが散乱していました。
広告
檀のローテーブルのには、コンビニ弁当の空き箱と、寿司のプラスチック容器がなり、コバエが数匹たかっています。
そしてソファの横では、美がぼさぼさに乱れた髪を振り乱し、赤ん坊を乱暴に揺すっていました。
「ちょっと、泣かないでよ! ミルクもんだでしょ! オムツも替えたじゃない! いい加減にしてよ、もうがおかしくなりそう!」
美の顔には、先私を嘲笑ったのあの勝ち誇った笑みは微もありませんでした。 目のには濃い隈が刻まれ、肌は荒れ果て、疲労と苛ちで鬼のような形相になっていました。
そして、リビングの畳のでは、夫の浩司が栓をしたまま、いびきをかいて横たわっていました。
「……何よ、このざまは」
恵子さんのくたい声が、赤ん坊の泣き声を切り裂きました。
美がハッとして振り返りました。 私と恵子さんの姿を認めると、その顔に瞬の揺がり、すぐにヒステリックな警戒へと変わりました。
「な、何ですか、勝に入ってこないでください! 浩司さん、起きてよ! 変なたちが入ってきた!」
美が夫の肩をで蹴ばしました。
夫はび起き、栓を引き抜いて目を擦りました。 界に私と恵子さんが入った瞬、夫の顔が引きつりました。
「け、恵子……!? それに由美、おなんで……!」
「お兄ちゃん」 恵子さんは歩に踏みしました。
広告
その線は、氷のように徹でした。 「昨、話で言ったはずよね。遺産分割の話しいもしていないのに、勝にこのに転がり込んで何をしてるの? お父さんの盆栽をゴミ袋に捨てたのは誰?」
夫は慌てて起きがり、ボサボサのを掻きながら、尊な態度を取り繕おうとしました。
「な、何言いに来たんだよ。盆栽なんて枯れかけのゴミだろ。それより恵子、ちょうどいいところに来た。印鑑証と実印は持ってきたんだろうな? 産が待ってるんだよ。く続きを済ませねえと、駅のマンションの仮契約が流れちまうんだ!」
「印鑑証? 持ってくるわけないでしょう」
恵子さんは吐き捨てるように言いました。
「私はこのを売ることに絶対に反対よ。お父さんが遺した財産は、あなたのものじゃない。法定相続分として、私にも半分の権利があるわ」
「はあ!? ふざけんな!」 夫が血相を変えて鳴り声をげました。 「おはに嫁いだだろ! 男の俺が実を継ぐのが昔からの常識だ! それに俺は親父の介護をもやってやったんだぞ! その寄与分を考えたら、このが全部俺のものになるのは当たりだろ!」
「介護をやった?」
恵子さんがたく嘲笑いました。
「どのがそんなこと言うのよ。お父さんのオムツを度でも替えたことがあるの? デイサービスの送迎を度でもしたの? 全部、由美さんに丸投げして、自分はで女と遊んで子供作ってただけじゃない!」