"介護を奪われた私へ「お母さん、やっと会えた」" 第4話
そして……会いに来てくれて、本当にありがとう。すごく、すごく嬉しい」
葵がまた涙ぐみそうになるのを、私は優しく止めました。
「でもね、今はして込んでいて、ゆっくりお茶もせないの。葵ちゃん、話番号を教えてくれる? 落ち着いたら、私から必ず連絡するから。今度は、でゆっくり美しいケーキをべましょう」
葵は夫と美を鋭く睨みつけ、それから私を見て、名残惜しそうに頷きました。
「絶対だよ、由美ママ。絶対に話してね」
「ええ、約束するわ」
私は奈津子さんと連絡先を交換し、を玄関のまで見送りました。 角を曲がるまで何度も振り返ってを振る葵の姿を見ていたら、え切っていた私の胸の奥に、確かな灯が灯るのをじました。
私は、無価値ななんかじゃない。 子供を産めなかったからといって、私のがすべて無駄だったわけじゃない。 誰かをし、誰かを守り、その温もりをに残すことができた。 それを、あの女が越しに証してくれたのです。
引き戸を閉めてリビングに戻ると、夫が仁王ちで待っていました。
「茶番は終わったか? えらくいい気になってるようだが、現実を見ろよ。あのガキがおの老の面倒を見てくれるわけでも、をくれるわけでもないんだ」
夫は嘲笑うように言いました。
広告
「親父の介護だって、俺がで稼いできた料でおをわせてやったからできたんだろ。おじゃ、うことすらできなかったはずだ。全部俺ののおかげなんだよ」
その言を聞いた瞬、私ので何かがカチリと音をててれました。
私はリビングのテーブルに歩み寄り、夫の目をまっすぐに見据えました。
「浩司さん。あなた、お義父さんの介護費用に、自分の料からいくらしたか覚えている?」
夫の表がピクリと固まりました。
「……あ? 何言ってんだ」
「お義父さんの介護ベッドのレンタル代、々のオムツ代、週に回通ったリハビリの送迎費用、夜の訪問護の特別加算。全部でいくらかかって、あなたがそのうちの円でも払ったことがある?」
「そ、それは……俺の料から活費をして……」
「活費? あなたがこのに毎入れていたのは、たったの万円よ」
私は淡々と言葉をねました。 、計簿を筋も違わずつけ続けてきた私の記憶は、極めて鮮でした。
「万円で、あなたと私とお義父さんのの費、費、用品が賄えるとう? りるわけがないでしょう。お義父さんの介護にかかった費用はね、すべてお義父さん自のと、お義父さんが遺してくれた定期預の取り崩し。そして、私が病院の事務パートと所の縫製の内職で稼いだ私のおからしていたのよ」
広告
「な……」
夫の顔から、急速に血の気が引いていきました。
「親戚のでは『俺が何百万もして親父を最の施設や護でてやってる』って吹聴していたようだけど、領収の宛名は全部、私の名かお義父さんの名よ。あなたは度だって、ケアマネジャーさんの名すら覚えたことがなかったじゃない」
美がそうに夫の腕を引っ張りました。
「浩司さん……? どういうこと? おじいさんの遺産って、浩司さんが全部管理してたんじゃないの……?」
「う、うるさい! 美は黙ってろ!」
夫は取り乱して鳴り散らしました。
「屁理屈をこねるな! 俺が男なんだ! このもも、親父の財産は全部俺が相続するんだよ! 法にそうなってんだ! おみたいな部者がをすな!」
私はもう、この男と言い争う気すら失せていました。
自分の過ちを認めることもできず、の労働を自分の柄にすり替え、都が悪くなれば「男」というっぺらい板を振りかざす。 歳にもなって、精神は甘やかされた子供のままでした。
「分かりました」
私は静かに言いました。
「自分の荷物をまとめます。待ってください」
「ふん、やっと分かったか。さっさと消えろ」
夫は吐き捨てるように言うと、美の腰を抱いて「で美いものでもって待とうぜ」と、わざとらしくきな音をてて玄関へ向かいました。
美も勝ち誇ったように私を瞥し、赤ん坊をあやしながらてきました。