"病室を愛人に譲れと言った医師の夫" 第10話
しかも、皮膚科や美容医療に特化した経験豊富なコーディネーターを常駐させるには、数か待ちだと言われた。
元から資が抜け落ちていく。 級タワーマンションの賃。 織の派な活費。 設サロンの内装事のローン。 そこへ、弁護士を通じて請求された毎の額な婚姻費用が、くのしかかっていた。
そして、綻びは庭の内部からも破裂した。
織が無事に産したものの、まれたのは男児ではなく女児だった。 それ自体は何の問題もないはずだが、「絶対に跡取りの男の子だ」とい込んでいた義母の態度は変した。 さらに織は、退院するなり「育児ノイローゼになりそうだから」と事の切を放棄し、実に顔をすことすら拒否したのだ。
義母が見ていた「若くて従順な嫁に介護され、孫に囲まれる優雅な老」は、初からっ端微に打ち砕かれた。
あるの午、私の会社のオフィスに、鬼のような形相の義母が乗り込んできた。
オフィスのエントランスで、義母は受付のスタッフを突きばさんばかりの勢いで喚き散らしたという。 「真由美さんをしなさい! 夫が困っているのに、自分だけぬくぬくと隠れて何様のつもりよ! くあの会社にを戻しなさい!」
けれど、私の会社はもう、あのの支配にはなかった。
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事に待していた警備員が義母を取り押さえ、顧問の藤本弁護士が分で駆けつけた。 藤本弁護士は名刺を義母の目のに突きつけ、徹に通告した。
「美代子さん。ここは法施設です。法侵入および威力業務妨害で、すでに警察へ通報いたしました。また、代表の真由美に対するつきまとい為として、裁判所に接禁止命令の申してをっています。これ以騒ぎを続けるなら、現犯逮捕となりますよ」
パトカーのサイレンがくから響いてきた瞬、義母は顔面を蒼にし、腰を抜かすようにして逃げった。 所の評判と世体だけをきがいにしてきた女が、息子の元嫁の会社で警察汰を起こしかけたのだ。 その噂は、義母が必に取り繕ってきた親族ネットワークのにも、あっというにれ渡ることになった。
ろ盾を失い、庭も仕事も沼に沈んでいく夫。 かつて私がで背負い、れず片付け、防波堤となって防ぎ止めていた現実の圧が、夫の細い肩に容赦なく直接りかかっていた。
そのの夜。
暗い部の、サイドテーブルに置かれた私のスマートフォンが、激しく振した。
普段ならサイレントモードで眠りを妨げられないようにしているが、会社の夜緊急転送ラインから、私のプライベート回線へ無理やり迂回させてかけてきた着信だった。
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画面に表示された番号は、クリニックの院の直通ダイヤルだった。
私は隣のベビーベッドに目をやった。 娘はすやすやと穏やかな寝息をてている。
ベッドから音をてずに抜けし、リビングへ移して通話ボタンを押した。
「……はい、です」
私の声が落ちた瞬、受話器の向こうから、苦しい荒い息遣いが漏れ聞こえてきた。
「……真由美、か?」
掠れた、湿り気のある声。 かつての傲な自信も、私を見していた酷な響きも、そこには微も残っていなかった。
「真由美……頼む、頼むから話を切らないでくれ。しだけでいい、話を聞いてくれ」
背景から、が散乱するカサカサという音と、ガラス瓶がぶつかる乾いた音が聞こえる。 酒をんでいるのだろう。 かつて「医師は常に静でなければならない」と偉そうに講釈を垂れていた男が、夜の診察で酔していた。
「用件なら、すべて藤本弁護士を通してください。個なお話しいは切いたしません」
私が械に告げると、夫は喉の奥から鳴のような嗚咽を漏らした。
「弁護士なんて言わないでくれ! 俺が悪かった……俺が全部違ってたんだ! 織のサロンは保健所に止められた。レーザーの患者からは訴訟を起こされそうだ。現のスタッフも全員辞めて、もうからの予約も回らないんだよ! このままじゃ、俺のクリニックは潰れる……!」
ったことではない。