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"病室を愛人に譲れと言った医師の夫" 第6話

私が今、あの病で初めて「嫌です」と言ったこと。 それが、夫の元に築かれていた砂のの、最初の崩壊の引きだったということを。

カーテンの隙から差し込む夕暮れのが、病のい壁を茜に染めていく。 私は静かに目を閉じ、これからの闘いに向けて、体の力を抜いた。

「奥さん、ちょっといい加減にしなさいよ!」

病院の個病棟のナースステーションで、切り声が響き渡った。 ドアの隙から漏れ聞こえてくるのは、聞き慣れた義母の声だった。

翌朝、面会制限のプレートが病棟の子錠に設定された直のことだった。 助産師さんたちが毅然とした態度でち塞がり、警備員を呼ぶまでって、ようやく義母と夫は追い払われたという。 点滴棒に掴まりながらトイレへ向かう途、ナースステーションの奥で助産師が「いくら業医の先でも、院の管理規定を無するのは困りますね」とく嘆息しているのが聞こえた。

世体を何よりもんじる夫と義母にとって、院のスタッフので「入り禁止の迷惑親族」として扱われた屈辱は耐え難かったはずだ。

けれど、私にとってそんなことはもうどうでもよかった。

入院から週。 井先による厳格な投薬管理と絶対静の甲斐あって、子宮頸管のさは持ち直し、妊娠週の半ばで退院の許がりた。

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「さん、本当によく頑張りましたね。でも、決して無理は禁物ですよ。予定まであとかとし。ご自宅でもできる限り横になって過ごしてください」 井先の温かい言葉にをげ、私は病院をにした。

迎えのを頼んだのは、夫ではない。 学代からの親友で、独して政士事務所を営んでいる田奈津子だった。

「真由美、本当にお疲れ様。顔は入院よりずっといいわよ」 奈津子の運転するコンパクトカーの助席に乗り込むと、胸の奥に溜まっていたたいのようなものが、すっと溶けていくような気がした。

が向かったのは、夫と暮らしていた郊の戸建てではない。 私が独代に購入し、結婚も私名義のまま賃貸にしていた、駅くの分譲マンションだった。 半、たまたまの居者が退したのをに、リフォームだけ済ませて空のままにしてあっただ。

「鍵、預かっておいた荷物の搬入も全部終わってるからね。あと、産ケアのヘルパーさんと民の助産師訪問サービス、退院にわせて週回来てもらえるよう契約を巻いておいたわよ」 奈津子は慣れた調子でハンドルを切りながら、ダッシュボードから通の茶封筒を取りして私に渡した。

「それから、これ。顧問の藤本弁護士から預かってきた類の控え」

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封筒をけると、そこには裁判所への提を控えた『婚姻費用分担請求申』と、夫のクリニック宛てに発送された内容証郵便の謄本が綺麗にファイリングされていた。

夫・浩司の推定収、約千百万円。 私の役員報酬や妊娠に伴う休業リスク、そしてまれてくる子の養育環境を鑑み、庭裁判所の算定表に基づいた妥当かつ限にい婚姻費用(活費)の支払いを求める請求だ。

「浩司さん、織と同棲するために駅の築タワマンを借りて、クリニックの資繰りもかなり無理してるんでしょ? そこへこの請求と、会社の契約終通が同に届いたわけね」 奈津子がバックミラー越しに、元にややかな笑みを浮かべた。

「内容証が届いたの夕方、浩司さんから私の事務所にものすごい剣幕で話があったわよ。『妻をそそのかして庭を壊す気か!』『男の稼ぎに寄しておいて、よくもこんな真似ができるな』って。だから私、淡々と言ってやったの。『私は受任している弁護士の指示に従って事務続きを代しているだけです。苦はすべて藤本弁護士へどうぞ』って切ってやったわ」

喉の奥で、静かな溜め息が漏れた。 夫の考回は、どこまでも分かりやすい。

自分がを作り、妻を病から追いそうとし、妻の会社の業務を当に買い叩こうとしたことには、片の罪悪も抱いていない。

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